更年期障害

その「物忘れ」、更年期障害かも!?原因と改善策について

何か用事があって立ち上がったのに、何をしようとしたのか忘れてしまった…。

顔はわかるのに、名前が思い出せない…。

こういった「物忘れ」を年齢によるものと決めつけてはいませんか?

でも、あなたが女性なら“更年期障害”にも原因があるかもしれないんです。

ここでは、物忘れと更年期の関係について原因改善する方法と、認知症との違いをお伝えします。

 

物忘れをする原因

40歳を過ぎると、日常生活の中で“ちょっとした物忘れ”をすることが増えてきます。

例えば、芸能人の名前が思い出せない、買い物に行ったのに買い忘れをする…などです。

どれも些細なことですが、回数が増えてくると自分自身も周囲の人も「また…」と思いますよね。

 
このような物忘れは年齢を重ねると自然に生じてくるものですが、

この年代の女性には「閉経」という体の大きな変化もあり、

この2つによって「物忘れ」が起こっている可能性があります。

それぞれを詳しく見てみましょう。

加齢による物忘れの原因

年をとると物忘れが激しくなるのは、経験的に誰もが知っていますね。

これは、加齢に伴って脳への血流が不足してくるところに原因があると言われています。

 
もともと脳は体の器官の中でも大量の酸素とエネルギーを消費しています。

これらを脳へ運ぶのは「血液」ですね。

しかし、年齢を重ねていくと、

血液を送り出すポンプの役割の“心臓”や、供給ルートである“血管”も老化してしまいます。

若い頃は力強く拍動していた心臓も徐々に弱まってきますし、

血管の内側にはコレステロールなどが付着して狭まってしまうようになります。

脳は体の一番上にあるので、重力に逆らって血液を供給するのにも困難な部位ですが、

このような組織の老化によってますます血液を届けにくい状況になっていくわけです。

 
この状況が続くと、脳の深部にある「海馬」という器官が少しずつダメージを受けていきます。

海馬は新しい記憶を整理するところで、

ここで処理された情報が「大脳」に蓄積されて記憶されていきます。

一方、大脳に送られなかった情報は海馬内に留まり、数時間(一説には9時間)以内で消失してしまいますが、

日常のちょっとした記憶なら、海馬内に留めておければ十分なわけです。

でも、海馬は血流不足にとても弱い、デリケートな器官です。

血流不足によって海馬の神経細胞が減少したリ機能低下を起こしたりすると、

新しい情報の整理ができず、記憶が定着しなくなってしまうのです。

これが、加齢による物忘れの進行の大きな原因と考えられています。

更年期障害による物忘れの原因

このような加齢による物忘れは男女問わずに起こる現象ですが、

更年期の女性には物忘れを加速させる要因があると言われています。

これには閉経によって女性ホルモン「エストロゲン」の分泌量が

著しく減少することと深く関係しているのです。

 
エストロゲンは女性らしい体を作る働きのほか、

動脈硬化の予防、カルシウムやコレステロールの代謝など様々な機能を持っています。

その一つに脳への作用があります。

脳では血流を維持するために神経伝達物質「アセチルコリン」などが作用していますが、

これが不足すると血流低下によって脳の神経細胞同士の結合(シナプス)が減少し、

記憶力が落ちることがわかっています。

エストロゲンにはアセチルコリンを補う働きがあり、

投与によって脳内の血管を拡張し血流を回復させるだけでなく、

シナプスを増加する効果があることが、理化学研究所・脳科学総合研究センターによって発表されています。

さらに、脳にはエストロゲンの分泌を促す「視床下部」など様々な部位に

それを受け取る“受容体”がありますが、海馬にも多数あることがわかっています。

エストロゲンが海馬に直接作用しているわけですね。

女性の方が物事を細かく記憶していたり、関連した記憶を次々と呼び起したりできるのは、

エストロゲンによる影響が大きいと見られています。

また、エストロゲンには

認知症の1つ“アルツハイマー病”の原因であるアミロイドβタンパク質による脳の損傷から

脳の神経細胞を保護する作用があることがわかっています。

 
ところが、これらの恩恵を受けていた女性の脳に異変をもたらすのが「閉経」です。

閉経を迎えることで、女性の脳は急激にダメージを受けやすくなってしまうのです。

これが、更年期障害としての物忘れ(記憶力の低下)が激しくなる要因であると見られています。

また、女性の方が男性よりもアルツハイマー発症率が高いことも、

エストロゲンの保護が急激に失われることと関係があるのでは…と示唆されています。

 
さらに、更年期障害による不眠やイライラ・ストレスなどの精神状態も記憶力の低下に関りがあります。

更年期障害の症状として最も発症率の高いホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・多汗)は、

就寝時に起こると大量の汗による不快感のために目が覚めてしまいます。

睡眠は脳が得た情報を処理し、記憶を形成するのに重要な時間とされており、

アメリカ・バークレー大学の研究によって

睡眠不足や質の低下が記憶の定着・形成・物忘れに影響することがわかっています。

また、イライラやストレスを感じていると不眠症になり、脳に影響を与えることになりますし、

この状態が続くと、ストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」が分泌され、

海馬が委縮してしまうこともわかっています。

 
このように、更年期世代の女性の場合は、閉経によるエストロゲンの低下だけでなく、

更年期障害による症状の弊害として記憶力の低下も起こるわけです。

単なる加齢による物忘れに加えて女性ならではの要因がプラスされるわけですから、

余計に「物忘れ」を痛感するのかもしれませんね。

 

更年期障害と認知症による物忘れの違い

当人にとっても周囲の人にとっても、「物忘れ」の原因が何なのかは気になるところですね。

まず思い当たるのは加齢、今回紹介した更年期障害、そして認知症といったところでしょうか。

しかし、加齢と更年期障害による物忘れについては、原因の特定が困難です。

更年期障害についてはエストロゲンの量を調べればわかりますが、

エストロゲンの低下が及ぼす影響は個人差が激しく、物忘れの症状に影響しているかは断定できないので、

単なる加齢による物忘れの可能性も否定できないのです。

 
でも、加齢や更年期障害による物忘れと、認知症による物忘れには大きな違いがあります

例えば、買い物に行くのでリストを作ったとします。

加齢や更年期障害の場合は、このリストを持ってくるのを忘れたり、

どこにしまったかがわからなくなったりするのですが、

認知症の場合はメモをしたこと自体を忘れてしまいます。

つまり、加齢や更年期障害の場合は「行為」は記憶されていてもその後の「処理」が不明瞭で、

認知症の場合は「行為」そのものの記憶がないために「処理」の記憶も残らないのです。

ですから、認知症による物忘れだと「さっき買い物リストを作ったでしょ」と言われても、

「作ったっけ?」となってしまうわけです。

忘れているという自覚が持てない点が大きな特徴といえるでしょう。

また、認知症の場合、物忘れ以外の症状として、

予定が立てられない、今までできていたことができなくなる…などが見られます。

さらにアルツハイマー病では脳が委縮するため、MRIなどの画像によって診断することが可能です。

 
しかし、記憶力が低下する原因には全く別の病気による可能性も考えられます。

例えば、亜鉛欠乏症、甲状腺機能低下症、脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などの脳疾患をはじめ様々な病気があり、

中には命に関わるものが隠れていることもあるわけです。

物忘れが進行していったり、頭痛など他の症状がみられたりする場合は、

速やかに医療機関を受診してくださいね。

 

改善する方法

更年期障害も加齢と同様、ある程度の年齢になれば避けて通れないものですが、

やはり物忘れをすれば何らかの不都合が生じ、困ることだってありますね。

そんな事態を少しでも改善するために、自分でできる方法があります。

ポイントは「脳への血流増加」と「脳の活性化」です。

この2つを組み合わせると、さらに効果的ですよ。

それでは、具体的な方法を紹介しましょう。

食事と嗜好品

意外と身近な食材の中に物忘れの予防に役立つものもあります。

これらを上手に取り入れる工夫をしてみましょう。

 
例えば、アジ・イワシ・サバといった青魚を積極的に摂るのも良い方法です。

青魚には

  • DHA(ドコサヘキサエン酸)
  • EPA(エイコサペンタエン酸)

といったオメガ3系の不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

これらは動脈硬化を予防することで加齢による脳への血流不足を改善し、

生活習慣病の予防にも効果があることがわかっています。

また、脳には血液脳関門というゲートがあり、

脳に入れる物質と入れない物質を血液の中からより分けているのですが、

DHAはここを通過することができる数少ない物質の1つです。

脳内に達したDHAは神経細胞の細胞膜を柔らかくしてシナプスを活性化してくれるため、

情報の伝達をスムーズにするという効果をもたらします。

ちなみに、EPAは血液脳関門を通過することができませんが、

摂取すれば血液内のEPA濃度を上げることができ、全身の血流改善に大きな効果があるため、

脳内の血流もよくなることが示唆されています。

また、摂取量の目安ですが、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると、

DHA・EPAの総量で1日あたり1000㎎とされています。

具体的な魚の量に換算すると、

刺身など生の状態でマグロ(トロ)で2~5切れ、ハマチで3~5切れ程度になります。

(一般財団法人日本水産油脂協会:DHA・EPA協議会)

ただし、調理すると油と共に抜けてしまうので、気をつけてくださいね。

 
一方で、摂取に気をつけたいものもあります

特に「アルコール」と「タバコ」の2つは止めておいた方が良いでしょう。

アルコールは摂取量が多いと脳細胞が損傷を受けることがわかっており、記憶力の低下につながります。

また、タバコを吸うと一酸化炭素が発生しますが、

これは酸素を運搬する“ヘモグロビン”と結びつくことで酸素の供給を阻害します。

その結果、体内が酸欠状態になり、脳への酸素供給も不足してしまいます。

さらに、一酸化炭素とヘモグロビンが結びついたものの半分量が正常に戻るのに3~4時間かかるので、

喫煙回数が多い人は慢性的な酸欠状態になります。

一酸化炭素はタバコの煙にも含まれますので、受動喫煙にも気をつけましょう。

サプリメント

DHAEPAはサプリメントでも摂ることができます。

毎日お刺身では飽きる、青魚が苦手、手軽に補いたい…という人には便利ですね。

イチョウ葉エキスも血流改善効果があり、記憶力向上に効果があると言われています。

脳のトレーニング

「使わないレールは錆びる」と言いますが、事実、頭も使わないと機能が低下することがわかっています。

脳にとって心地よい刺激を与えていると、脳の衰えを予防できるということです。

これには、いわゆる「脳トレ」が適しています。

近年では書店に行くと脳トレのコーナーがあり、多数の書籍が出版されています。

クロスワードパズル」や「数独(ナンプレ)」などは有名ですね。

これらはスマホ用のアプリでもありますし、もう少し複雑なゲームなども開発されています。

好みに応じて挑戦してみると良いでしょう。

 
また、日常生活の中でできる脳トレもあります。

例えば、昨日の食事メニューを全部思い出してみる、日記をつけてみる…など

日々を細かく振り返ることで脳を刺激することができますよ。

運動

一見、無関係に思えますが、実は、運動による記憶力の向上に関して、多くの研究結果が発表されています。

これは運動によって脳への血液の流入が増え

それによって神経細胞が活性化されることと関係があるようです。

筑波大と米国カリフォルニア大の研究でも、

ジョギング程度の運動を10分間した直後は短期的な記憶力が増すことが確認されています。

ラットの実験では習慣的な運動で海馬の神経細胞が増えることが確かめられているそうですから、

人の脳でも同様のことが起こっているのかもしれませんね。

これらの運動には、酸素の供給に最適な「有酸素運動」がおすすめです。

ジョギングがきつければ長めにウォーキングしたリ自転車に乗ったりして、

体内に新鮮な酸素をたくさん取り入れるように心掛けましょう。

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