更年期障害

トイレが近くなるのは更年期障害?

「夜中に何度もトイレに起きる」「トイレに困るので思うように外出できない」…。

こういった悩みは年齢が上がるにつれて増加しますが、その原因の1つとなるのが“更年期”です。

ここでは、更年期障害の1つでもある“トイレの近さ(頻尿)”について、その原因と対策を紹介します。

 

更年期障害とトイレの関係

若い頃なら何時間も間隔が空いていたトイレ。

寝る前に行っておけば、朝まで尿意を感じなかい日が多かったはずです。

でも、いつの間にかトイレの回数が増えていたり、夜中に目覚めたりすることが増えてきます。

その最初の兆候があるのが、ちょうど「更年期」ごろです。

更年期とは?

更年期とは、閉経前後の5年間ずつ、計10年間の時期を指します。

この時期は卵巣から分泌される女性ホルモン「エストロゲン」が急激に減少するため、

分泌の司令塔にあたる脳の視床下部が混乱をおこすと言われています。

これによって視床下部と深い関りを持つ「自律神経」のコントロールも上手くできなくなり、

体の調節機能に不具合が生じてしまうのです。

その結果、更年期世代の女性には様々な体調の変化が現れます。

最も症例の多いのぼせ・ほてり・多汗といった「ホットフラッシュ」や

イライラ・憂うつ感などは更年期障害として認知度が高いですね。

しかし、今回のテーマである頻尿など“トイレにまつわるトラブル”も更年期の影響を受けているのです。

エストロゲンと排尿の関係

自律神経」は、私たちの意思と無関係に、体の様々な機能を調節する神経です。

これは大きく2種類に分けられ、

主に活動時(運動、攻撃、興奮した時など)に働く神経を「交感神経」、

休息時(リラックスした時など)に働く神経を「副交感神経」といいます。

この2つの自律神経はそれぞれ逆の作用(拮抗作用)を持ち合わせていて、

脳の指示により組織や器官をコントロールしています。

例えば、走るときは交感神経が働いて心拍数と血圧を上げて、

全身の筋肉で消費される酸素やエネルギー源を供給しようとします。

逆に、睡眠中はこれらの消費量が低下するので、

心拍も血圧も下げ、消化管での吸収を促進しエネルギーの貯蔵をしようと働きます。

このように、交感神経と副交感神経が拮抗することで、体は常に調節されているわけです。

 
同じことが尿を溜める「膀胱」でも起こっています。

活動時というのは多くの動物でみると、獲物を攻撃しているときか、襲われているときです。

どちらの場合も生死がかかった状態ですから、体は攻撃あるいは防御に適した機能に集約します。

これは膀胱で考えると“尿意を催している場合ではない”ということになりますね。

ですから、交感神経が働いて膀胱は緩み、より多くの尿が蓄えられるようになるのと同時に

尿意を感じにくくなります。

運動中や何かに熱中している時は尿意を感じにくくなるという経験がありますよね。

逆に、リラックスした状態では排尿する余裕が生まれるため、膀胱は収縮し、尿意を感じやすくなります。

ちなみに、睡眠時もリラックスした状態ではありますが、

睡眠中は尿を作りにくくする「抗利尿ホルモン」が分泌されるので、通常は尿意を感じにくくなります。

ところが自律神経の調節機能が上手く働いていないと、これらのコントロールに不具合が生じてしまいます。

更年期世代の女性はエストロゲンの分泌量低下によって自律神経に乱れが生じていますから、

排尿のコントロールにも不具合が生じてしまうのです。

 
また、エストロゲンには細胞にハリを持たせ若々しさを持続させる作用があります。

お肌の状態は月経周期によって作用されるので、

エストロゲンとの関係を実感したことがある女性も少なくないでしょう。

この作用はお肌だけでなく尿道や骨盤底筋などの組織にも影響し、

更年期に入ってエストロゲンが低下したことが泌尿器系の組織のハリを失わせ

これらを支える筋肉の弾力も低下させてしまうと考えられています。

その他にも、エストロゲンには膀胱周辺の筋肉、尿道に対しての知覚、交感神経などをコントロールしながら

正常な排尿を促す役割があります。

これらの働きがエストロゲンの減少によって低下し、頻尿が起こりやすくなってしまうのです。

さらに、尿道の粘膜からの分泌物や筋肉が減少して尿道が委縮してしまうために、

「尿路感染症」などのリスクが高まることもあります。

女性特有の原因

他にも、女性には更年期障害で頻尿を起こしやすくする潜在的な要素があります。

それは妊娠と出産です。

赤ちゃんの多くは3000g前後までお母さんの子宮の中で成長し、誕生してきます。

つまり、女性の子宮を支える筋肉(骨盤底筋など)は数か月の間、数㎏を支え続けなければなりません。

さらに、出産時には赤ちゃんが狭い産道を通るため、周辺の組織にも大きな負荷をかけてしまいます。

このときのダメージが加齢とともに表面化するのがトイレにまつわるトラブルです。

 
妊娠や出産で重たい子宮を支え続け緩んでしまった骨盤底筋は、

40代にさしかかる頃、加齢に伴ってその筋力に衰えもプラスされていきます。

より緩みやすくなった骨盤底筋は重力に逆らって子宮を支え続けることができなくなり

下方にある膀胱などの臓器を圧迫してしまうのです。

こうなると、膀胱に尿が十分溜まっていなくても、

“圧迫”という刺激を脳が“尿が溜まったもの”と勘違いして排尿の指示を出してしまうため、

尿意を催し頻尿になってしまうのです。

これは、「過活動膀胱」の原因の1つです。

過活動膀胱とは、

  • 急に我慢できないような尿意が起こる
  • トイレが近い
  • 我慢ができず尿が漏れてしまうことがある

などの症状を示す病気で、

アステラス製薬によると、40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱の症状をもっているそうです。

妊娠・出産による骨盤底筋などのダメージが、

更年期症状である自律神経の不調や細胞レベルの衰えと重なって、

「頻尿」の症状を強くしていることも十分に考えられるわけですね。

さらに、頻尿だけでなく、

立ち上がったりくしゃみをしたりなどお腹に力が入ったときに尿漏れを起こしてしまう「腹圧性尿失禁」や、

トイレに駆け込んでも間に合わない「切迫性尿失禁」も起こりやすくなります。

 

改善する方法

頻尿などの尿トラブルは、病院でも相談しにくいかもしれません。

人知れず悩み、何とかしたいと思う女性も多いことでしょう。

ここでは、自分でできる頻尿の改善方法を紹介します。

もちろん、頻尿によって日常生活に支障が出るようであれば、迷わず病院へ行きましょう。

食事

頻尿の原因が更年期にあるのであれば、

その発端である“エストロゲンの減少”を改善してあげるのが対策の1つとなります。

大豆イソフラボン」は体内でエストロゲンと似た構造を持つエクオールに変換されるため、

体がエストロゲンと勘違いしてくれるので、更年期障害の様々な症状を改善するのに効果があります。

まずは大豆製品を毎日の食生活にプラスしてみましょう。

豆乳でスムージーを作ってもいいですし、豆腐や煮豆、納豆などを副菜に利用しても良いでしょう。

大豆以外にも、モヤシやヒヨコ豆に含まれています。

イソフラボンは体内に蓄えておくことができないため、毎日摂ることが重要です。

これらの食材を織り交ぜて、継続的に摂取できるように工夫すると良いですね。

 
また、抗酸化作用があり筋肉の衰えを防止する「ビタミンE」を摂ることで、

泌尿器周辺の組織もサポートしてあげましょう。

血行促進作用もあるので、冷えを予防して尿意を感じにくくする効果も期待できます。

最近話題のナッツ類や、魚卵、レバー、カボチャなどに多く含まれていますよ。

 
また、ストレスは自律神経を乱し、頻尿の原因となります。

黒ゴマ」に含まれるポリフェノール、カルシウム、ビタミンB群、鉄分には

自律神経の不調を和らげる効果があります。

頻尿だけでなく、同じ更年期障害として現れる「イライラ」などの精神状態も緩和してくれますよ。

白ゴマよりも黒ゴマの方が色素成分が豊富なので、より多くの効果が期待できます。

ただし、どちらのゴマも硬い殻に覆われているので、

そのまま食べても消化できないことが多いと言われています。

更年期障害には胃もたれなどの消化不良といった症状もありますから、

擦りゴマやペースト状になったもので摂取することをおすすめします。

 
さらに、夜間に頻尿が起こりやすい人は、寝る前の水分摂取に気をつけましょう。

特に、夕方以降にコーヒーや緑茶を飲むと、カフェインの利尿作用によって尿が作られやすくなります。

カフェインの代謝時間は年齢とともに増加する傾向があり、

体から抜けるのに長い人では5時間ほどかかることもあります。

飲むタイミングに注意してくださいね。

 
その一方で、塩分摂取を控えるのも大切です。

味付けの濃いものを食べると、体はそれを薄めようとして多量の水分が欲しくなります。

薄味を心掛けるようにしましょう。

運動

尿トラブルにまつわる直接的な原因は、自律神経の不調と骨盤底筋の緩みが大きな要因です。

適度な運動をすることは、ストレスなどの緊張を解きほぐし、

自律神経の調子を整える効果がありますので、ぜひ取り入れてみてください。

また、骨盤底筋も筋肉ですから、これをトレーニングすることでも大きな効果が得られます。

方法はとても簡単!

膣や肛門を意識的に絞めたり緩めたりするだけです。

「10秒間締め、10秒間力を抜く」を10回ほど繰り返します。

これは「骨盤底筋体操」といい、出産時に産科で習った人も多いかもしれませんね。

座っていても立っていてもOKですし、どこでも実践できますから、挑戦してみましょう。

 
また、運動というほどのことではありませんが、

トイレを我慢する」というのも実は立派なトレーニングです。

実は、頻尿によって膀胱に少量の尿しか溜まらないうちに排尿を繰り返していると、

膀胱の組織が委縮して広がりにくくなってしまうのです。

風船を思い浮かべてみましょう。

初めて膨らます風船は硬く、入れた空気も勢いよく出てしまいますが、

何度も膨らました風船は柔らかくなって膨らみやすく、縮むときも比較的ゆっくりになっています。

膀胱でも同じようなことが起こるのです。

つまり、尿意を我慢して尿が膀胱を押し広げるのを繰り返すことで、

膀胱が広がりやすくなり多くの尿を溜められるようになるのです。

数分間からスタートし、少しずつ我慢する時間を延ばしていきましょう。

なお、頻尿が更年期障害によるものと認められたり、

他の症状があったりしてホルモン補充療法による投薬治療を受けている場合は、

自律神経系のトラブルによる頻尿は改善されますが、骨盤底筋の緩みは改善しません。

ホルモン補充療法を受けていても並行して骨盤底筋体操を行うと、より高い効果が得られますよ。

その他の改善方法

もう少し積極的に改善したい場合は、漢方薬を使うという選択肢もあります。

漢方薬は病院で処方されるものもありますが、ドラッグストアなどで購入できる市販薬もあります。

成分の量などに違いはありますが、手軽に始められるので試してみるのも良いでしょう。

漢方薬で有名なツムラ㈱によると、

頻尿は漢方の概念にある「気・血・水(き・けつ・すい)」のうち「水」に異常があるために

排尿に関するトラブルが起こるとされるそうです。

これを改善する漢方薬として

  • 猪苓湯(ちょれいとう)
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)
  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

などがありますが、体力の有無や胃腸などの症状により用いられる薬が異なります。

薬剤師に相談して、自分の体質や体調にあったものを選んでもらうと安心です。

 
また、食事の項で紹介した「大豆イソフラボン」「ビタミンE」などはサプリメントで摂ることもできます。

特に、大豆イソフラボンに関しては、体質的に体内でエストロゲンに似た形に代謝できない人もいますので、

そういう人は代謝後の「エクオール」という物質で直接摂った方が効果的です。

また、泌尿器系に現れる影響の結果、

膀胱炎などの感染症にかかりやすくなる女性が更年期以降多く見られます。

尿道からの感染症を予防するサプリメントとして有名なのは「クランベリー」です。

クランベリーに含まれるポリフェノールには「キナ酸」「プロアントシアニジン」などがあり、

前者には尿のpHバランスを整え細菌の繁殖を防ぎ、

後者には強い抗酸化作用によって尿道の細菌感染を抑制する働きがあります。

アメリカの先住民の間では古くから薬として利用されていたそうですよ。

ノコギリヤシ」も頻尿対策のサプリメントとして用いられますが、

これは前立腺に作用するため男性用ですので注意してくださいね。

 
一方で、頻尿は“気にしすぎると逆効果”となる傾向があります。

トイレがあるか気になったり、また行きたくなるかもと不安になったりしていると、

ストレスがかかって余計に自律神経が不均衡になってしまうのです。

人によっては、他の更年期障害の症状にも影響してしまうかもしれません。

ですから、こういった要素を取り除いて、

気持ちを楽にしてあげることも頻尿を改善することにつながります。

例えば、外出するときは初めにトイレの位置を確認したり、近くを利用したりするようにしましょう。

最近では、ちょっと大きめの施設ならホームページなどでマップを確認することができます。

予めトイレの位置がわかっていれば安心できますね。

さらに、「尿漏れパッド」を利用してみるのもおすすめです。

非常に多くの種類が販売されていますし、吸収力が優れている割に薄型です。

オシャレにも響きませんので、ぜひ利用してみてください。

こういった予防策をとることで安心感や余裕が生まれ、頻尿の改善に役立ちますよ。

気持ちを楽に、更年期のトラブルと付き合っていきましょう。

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