更年期障害

更年期障害で虫歯・歯周病になる!その理由と改善策

近年では予防歯科の重要性が広く認知され、毎日の口腔ケアに時間をかける人も増えてきましたね。

しかし、女性の方が男性よりも口腔環境が悪化しやすいということを知っていますか?

そのうえ、更年期に入ると、さらにその傾向が強まることがわかっているのです。

そこで、ここでは更年期に起こりやすい「歯のトラブル」について、原因改善策をまとめてみました。

 

更年期障害と歯の関係

歯の健康は、口腔内(口の中)の衛生環境に大きく左右されます。

代表的な口腔内の病気というと、「歯周病」「虫歯(=齲歯:うし)」が思い浮かびますね。

この2つの病気の直接的な原因は細菌による感染ですが、実はそれらを促進してしまう要因があります。

それが「ドライマウス」。

実は、女性には口腔環境を悪化させ歯周病や虫歯を誘発する「ドライマウス」と、

「歯周病」の菌を増殖させる因子があるのです。

これらのトラブルについて詳しく見ていきましょう。

ドライマウス(口腔乾燥症)

40歳前後になると、朝起きた時に口の中が粘ついているのを感じたことはありませんか?

実はこれが「ドライマウス」です。

これは唾液の出る量が減るために起こる症状で、

粘つきだけでなく、本当に口の中の乾燥感を覚える人もいます。

 
ドライマウスの患者は日本全体で約800万人いると言われており、

男性にも見られますが、患者の多くは更年期以降の女性です。

これは女性ホルモン「エストロゲン」が40代に入ると急激に減少し始めることと関係しています。

唾液は“唾液腺”と呼ばれる器官から分泌されますが、唾液腺は性ホルモンの影響を受けるため、

女性ホルモンが減少する更年期以降の女性で発症しやすくなるのです。

さらに、更年期障害の症状の1つ「憂うつ感」「不安感」などを抱えている人は、

症状を緩和するために“抗うつ薬”を服用していることがありますが、

薬の種類によっては副作用としてドライマウスが現れることもあります。

 
では、口の中が渇いたり粘ついたりすることが、なぜ問題になるのでしょうか?

実は、私たちの口の中は、常に唾液で洗い流され、pHを弱酸性に保っています

その量は1日約1.5ℓにもなるそうですから、驚きですね。

しかし、ドライマウスになって唾液の量が減ると、

汚れを洗い流すことができなくなって、これをエサとして細菌が繁殖してしまいます。

私たちの口の中には常時300~500種類の細菌が棲んでおり、通常は悪さをしないのですが、

エサが豊富にあったり弱酸性が保てなくなってpHが酸性に傾いたりすると、

細菌が繁殖しやすい環境になってしまい、その結果、口の中に悪い影響を与えるようになってしまうのです。

例えば、口臭がきつくなったり、歯周病虫歯になったりなどです。

更年期女性の口の中は、

エストロゲン低下による影響で歯周病や虫歯になりやすい条件が揃ってしまうわけですね。

しかも、歯周病は口の中だけの疾患に留まらず、

深刻な病気に発展する可能性があることが近年明らかにされています。

これについては後述しますね。

歯周病

軽く炎症を起こしている状態の“歯肉炎”も含めると、

日本人の場合、歯周病の罹患率は7~8割と言われています。

とても高い数値ですね。

日本臨床歯周病学会によると、

歯周病とは細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患と説明されています。

歯磨きで取り切れなかった汚れに細菌が溜まってプラーク(歯垢)となり、

歯肉(歯茎)が炎症を起こして腫れてしまった状態というわけです。

これが進行すると歯を支える土台までもが溶けてしまい、

歯がぐらついたり抜けたりする事態になってしまうのです。

これらを引き起こす細菌の仲間をまとめて“歯周病菌”と呼んでいますが、

全国健康保険協会によると、この菌の中には女性ホルモンを栄養源として増殖するタイプのものがあるため、

女性は男性よりも歯周病になりやすいことがわかっているそうです。

 
歯周病は口腔衛生を保てるかどうかが予防のカギとなりますが、

女性の場合、エストロゲンが分泌されているときは歯周病菌のエサとなってしまい、

分泌が減ってしまうと唾液が減少して増殖しやすい環境を作ってしまうため、

どちらにしても発症しやすい状況であると言えますね。

さらに、エストロゲンはカルシウムの代謝にも関わるホルモンであるため、

更年期以降は骨密度が低下する傾向にあります。

これがアゴなどの骨に起きると、歯を支えることができなくなり、

噛む力が弱まって唾液を分泌しにくくなります

これも歯周病の進行に拍車をかけることになるのです。

女性であるということが歯周病になりやすい要因を抱えていることに加え、

更年期以降はさらにリスクが高まるということを覚えておきましょう。

虫歯(齲歯)

前述の通り、私たちの口の中は唾液によって弱酸性に保たれています。

でも、食事をした後は食べカスをエサにして細菌が増殖し、

その時に産生される“酸”によって口の中が酸性に傾いていきます。

この細菌を一般的には虫歯菌と呼んでおり、数種類存在しますが代表的なのはミュータンス菌です。

ここで歯磨きや唾液によって口の中が弱酸性に戻れば、虫歯菌の増殖は抑えられますね。

しかし、更年期を過ぎた女性では唾液の分泌量が減っているため、

口の中を弱酸性の状態に戻すことが難しくなっています

こうなると虫歯菌が増殖し続け、産生した酸の力で歯の表面にあるエナメル質を溶かしてしまいます。

これがいわゆる“虫歯”の状態です。

唾液が十分に分泌されていると歯を修復(再石灰化)することができるのですが、

更年期以降の女性はドライマウスになっていることが多いため、

正常な状態に戻りにくく、虫歯が進行するリスクが高いといえるのです。

歯が痛い

月経の周期と連動しておこる不調をPMSと言い、

代表的なものは下腹部痛や乳房のハリ、頭痛、イライラなどありますが、

中には“歯の痛み”を訴える人もいます。

これは、PMSによって体の疲れや寝不足が起こることにより、

免疫力が低下して口腔内でも炎症が起こりやすくなるからだと考えられています。

特に、月経と共に分泌される女性ホルモンの1つ「プロスタグランジン」には痛みを強める作用があり、

歯や歯肉の痛みも例外ではありません。

通常なら感じないほどの虫歯や歯肉の炎症であっても、過敏に感じている可能性があるのです。

このため、更年期前半の閉経前の女性では、月経の周期とともに歯の痛みを感じる人もいます。

 
また、更年期世代の女性は多くのストレスを抱える時期でもあります。

過剰なストレスは寝不足や体力の低下を引き起こし、結果として免疫力の低下も招きます。

これも更年期に歯痛を感じる原因になっていると言われています。

歯が浮く

歯がぐらついたり、噛み締めた時に違和感があったりする“歯の浮き”は、

多くがストレスによる就寝時の歯ぎしり・喰いしばりなどで

強制的に歯が揺すられてしまった結果、生じます。

歯ぎしりや喰いしばりは更年期と直接的に関係があるわけではありませんが、

更年期世代の女性はたくさんのストレスを抱え込む年代でもあるため、

起こりやすい症状の1つです。

他に、歯周病による炎症の進行なども歯が浮く原因になります。

歯がグラグラすることで周囲の神経が刺激され、痛みを感じることもあります。

歯ぎしり・喰いしばりの場合は噛み合わせを調整したり、

寝るときに樹脂製の“マウスピース”を歯にはめたりすると、歯への負担を軽減することができます。

歯科医に相談してみましょう。

改善策

このように、歯にまつわる更年期のトラブルの多くはドライマウス

…つまり唾液の分泌量の減少によるものです。

さらに、ドライマウスが進行させる「歯周病」が重篤な疾患の原因になりうることが、

近年の調査研究で明らかになりました。

歯周病の菌が歯茎の奥深くまで入り込んでしまうと、

血液を介して全身を巡り、様々な病気を引き起こす危険性が指摘されているのです。

日本大学松戸歯学部付属病院によると、歯周病は

糖尿病・心臓疾患・動脈硬化・誤嚥性肺炎・早産・低体重児出産・骨粗しょう症・腎炎・関節炎といった

全身疾患の危険因子となることがわかっているそうです。

これらの中には命に関わる病気や、更なる合併症を起こす病気も含まれますから、

「単なる歯周病」と侮ってはいけませんね。

実際のところ、心臓病の手術の際には事前に歯周病などの歯科治療を受けておくことも推奨されています。

また、歯周病だけでなく虫歯や歯痛なども咀嚼を困難にし、

栄養状態の悪化やそれによる免疫力の低下につながることも示唆されています。

 
このように考えると、更年期世代の女性にとって口腔トラブルや様々な病気を予防するためには、

正常な唾液の分泌を促すことが重要であることがわかりますね。

もちろん、日頃の口腔ケアもしっかり行わなければなりません。

そのためのポイントを紹介しましょう。

毎日の口腔ケア

菌が繁殖するには、その菌に適した「栄養」と「環境」が必要です。

口の中の場合、私たちの食べカスや菌が繁殖したプラークという魅力的な要素がありますから、

まずはこれを取り除いてしまうのが一番です。

そのために必要なのは、食後のブラッシングです。

特に食べカスやプラークが溜まりやすい“歯と歯の間”や“歯と歯茎の境目”を意識して

ブラッシングするようにしましょう。

 
歯ブラシにはブラシの硬さ、ヘッドの大きさなどメーカーにより様々なタイプが販売されています。

自分が使いやすいものを選べば良いのですが、ブラシは硬すぎると歯茎を傷つけてしまいますし、

ヘッドが大きいと奥歯に届きにくくなりますので、磨くときに気をつけてくださいね。

特に、歯と歯の間はデンタルフロスがおすすめです。

歯間ブラシを利用している人も多いと思いますが、

これだとブラシが通る歯茎に近い部分の汚れしか取れないことが多く、

歯と歯の接点に溜まったプラークはそのままになってしまいます。

この点、フロスは寄り集まった糸でできているので歯の接点も無理なく通すことができ、

歯の表面を滑らせることで満遍なく汚れをこそぎ落とすことができますよ。

 
また、歯ブラシを衛生的に保つことも大切です。

使用後の歯ブラシには目に見えない微生物や細菌が数えきれないほど付着しています。

水洗いが不十分だと、残った汚れが菌の温床になってしまいます。

使用後はきちんと水洗いしてよく乾かすようにしましょう

また、歯ブラシを定期的に交換することもポイントです。

毎日毎日使っているうちに、ブラシのコシがなくなって、汚れを掻き取る力が弱まってしまいます。

1カ月に一度くらいを目安に歯ブラシを交換すると良いでしょう。

食事・生活

食事をすると、唾液の分泌量は促進されますが、特に重要なのは咀嚼(噛むこと)です。

“噛む”という行為があごや脳に刺激として伝わり、唾液の分泌量を増やすことができるのです。

現代人の食事には昔と比べて硬いものが減っていると言いますから、

意識的に硬い食材を用意したリ、噛む回数を増やすように心掛けると良いですね。

 
また、ガムを噛むことも唾液の分泌に効果があります。

加えて、あごの発達が促され、唾液の分泌がスムーズになるというのもメリットです。

ただし、歯磨き後に砂糖入りのガムを噛んでは無意味ですから、シュガーレスタイプを選んでくださいね。

中でもおすすめなのは“キシリトール”入りのガムです。

歯の再石灰化を促進してくれるので虫歯の前段階を改善してくれますよ。

 
なお、喫煙は唾液の分泌を阻害すると言われています。

これはタバコに含まれるタール・ニコチンなどによって血行が悪くなり、

その結果、唾液の分泌機能が低下してしまうと考えられています。

マッサージ

ヒトの場合、唾液腺は口の中に3か所あり、それぞれ「舌下腺」「顎下線」「耳下腺」と呼ばれています。

“流行性耳下腺炎(おたふく風邪)”の腫れる場所として有名な耳下腺も、唾液の分泌器官なんですね。

この3か所をマッサージすると、唾液の分泌が促進されることがわかっています。

実践すると気づきますが、すぐに効果が現れるのも嬉しいポイントです。

食事前にマッサージすると、唾液の分泌を促すことができ、消化が良くなります。

また、外出中で歯磨きができないときなどにマッサージして唾液量を増やすのも、

歯周病予防などに効果がありますよ。

 
それでは、唾液腺の場所とマッサージ法を紹介しますね。

《唾液腺のマッサージ法》
唾液腺場所マッサージ法
耳下腺上の奥歯の左右付近
顔を挟むように左右の指3本を奥歯付近にあて、円を描く。
舌下腺舌の付け根下あごの内側、舌の真下あたりを左右の親指で押し上げる。
顎下腺下あごの首寄りの部分の左右内側いわゆる“エラ”よりもあご側で骨の内側にある柔らかいところに親指をあて、耳からあごに向かって少しずつずらしながら圧迫していく。

舌体操

唾液の分泌を良くするには、舌を大きく動かすことも有効な手段です。

どうしても“変顔”になってしまうのですが、歯科医が推奨するちゃんとした方法です。

入浴中などは他人に見られることもなく、血行も良くなっているので、

舌体操のおすすめのタイミングですよ。

 
方法は口を開けて行うもの・閉じて行うものがありますが、それぞれ5回ずつが目安です。

後者は“ほうれい線対策”としても有効ですから、更年期世代の女性には特におすすめしたい方法です。

ぜひ実践してみてくださいね。

《口を開けて行う舌体操》

  1. 舌を思い切り突き出したり引っ込めたりする
  2. 舌を鼻とあごに付けるつもりで上下に伸ばす
  3. 唇の外側を舐めるように、大きく回す(右回転・左回転交互に)
《口を閉じて行う舌体操》

  1. 上唇の内側を押す
  2. 下唇の内側を押す
  3. 上下の歯茎の外側を舐めるように回す(右回転・左回転交互に)

 

歯科定期検診の効果

どんなに毎日しっかりと口腔ケアをしていても、取り切れない汚れ(プラーク)は残ってしまいます。

蓄積したプラークは硬い“歯石”へと変化してしまい、

こうなると自宅では取り除くことができません。

残念なことに、プラークが歯石へと変わるのにはたった2~3日間しかかからないので、

ちょっとした磨き残しも歯石に変わってしまうのです。

歯石ができると歯の表面がデコボコしてしまい、

そこに歯周病菌などの細菌が付着しやすくなる上に、きれいにケアするのも難しくなります

こうなると悪循環で、磨き残しが増え、細菌の温床ができあがってしまうのです。

 
ですから、定期的に歯科医を受診して、

歯石などを除去してもらったり、他のトラブルがないかを確認してもらったりするのは、

歯や全身の健康を保つためにもとても有意義なことです。

また、プロに口の中を見てもらうと、

磨き方のクセなども指摘してもらえるので、日頃のケアにも無駄がなくなります。

できれば3か月、長くても半年に1回は定期検診を受けるようにした方が良いでしょう。

なお、骨粗しょう症の治療で薬を服用している人は、歯科治療に影響することがありますので、

歯科医に必ずその旨を伝えてくださいね。

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