更年期障害

更年期障害に漢方薬は効果ある?

漢方

最近では身近になった「漢方薬」。

特に「月経不順」や「更年期障害」など、女性の不調には効果を発揮しやすい薬として見直されています。

しかし、どこで何を入手し、どのくらいの期間利用すればよいのでしょうか?

また、副作用や、一般的な薬と違って注意すべき点などがあるのでしょうか?

今回は、更年期障害で漢方薬を利用する場合の効果や疑問について、解説していきます。

 

東洋医学からみる「更年期障害」とは?

更年期とは、子どもを産める(=排卵のある)体から、卵巣機能が低下して閉経していく変化の時期を指し、

日本人女性では45~55歳くらいが該当します。

この時期は女性ホルモンの分泌リズムが乱れたり、分泌量が変わったりするため、

内分泌の変化に体がついていけず

ほてりやのぼせ、急に汗をかく、イライラ、不安感といった更年期障害が起こりやすくなります。

さらに、閉経前後の女性は、子供の独立・夫の退職があったり、親の介護が始まったり…と

環境も変わりやすい時期です。

気づかぬうちに溜めこんだストレスも更年期の体調に悪影響を与えると考えられています。

 
漢方では、こうした卵巣機能や女性ホルモンの代謝は「(じん)」によるものと捉えます。

「腎」とは腎臓・副腎・泌尿器・生殖器などを表す言葉で、

人の持つ「気」とその流れをコントロールしているのですが、

更年期にはこの「気」が急激に低下し「腎虚」 の状態になるため、

更年期障害がおこると考えられています。

 

漢方の診断方法

「漢方薬」というと中国渡来の薬のように思われがちですが、実は日本で発展したものです。

もちろん、元となっているのは伝統的な中国医学で、

これが長い期間を経て日本国内で漢方医学が成立し、日本人にあった薬の組み合わせが考えられました。

西洋医学の薬は原因が特定できている病気の治療には大変有効ですが、

漢方医学では体全体の不調を診て治療にあたるため、病気とみなされない体調不良にも効果を発揮します。

この原点にあるのが、漢方医学の「」という概念です。

これは、いわゆる“体質”を指す言葉で、次のようにタイプを分けています。

 

《“証”について》
分類タイプの例
実証体力がある。ガッチリしていて筋肉質。顔色がよく艶がある。
暑がりで、胃腸が強く便秘気味。声が大きい。
虚証体力がなくやせ型、または水太り。
筋肉が弱く、顔が青白くハリがない。
胃腸が弱く下痢をしやすい。寒がり。
中間証虚証と実証の中間のタイプ。

このため、同じ症状があっても「証」が違っていれば異なる薬が処方されます。

西洋医学では症状が同じなら同じ成分の薬が出されるので、

漢方医学がいかに体質を重視しているかがわかりますね。

また、西洋医学では生殖器などの疾患を除き、男女の別なく薬を処方しますが、

漢方では男女差も考慮して処方を組みます。

これは「婦人の病気は男子にくらべ十倍治し難し」(備急 千金要方,医心方)という認識が

漢方医学の基盤にあるからです。

女性に顕著に現れ、かつ症状が複雑で個人差の大きい更年期障害の治療に向いていると言えるでしょう。

 
さらに、漢方医学では体の要素は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の3因子からできていると考えます。

私たちの体はこの3つの要素が体内をうまく巡ることによって、健康が維持されると見るのです。

そのため、診察や問診で「気・血・水」の状態を診て、どこに問題があるのかを探っていきます。

このうち、更年期では気や血の不調からくるものが多いと言われています。

 

《気・血・水について》
種類表すもの不調の例
気力気虚(ききょ):無気力やだるさ、疲れなど
気滞(きたい)・気うつ:頭重、息苦しさ、喉の詰まり、お腹の張りなど
気逆(きぎゃく):ホットフラッシュ、自律神経失調症様ののぼせ、動悸、発汗、不安など

血液瘀血(おけつ):月経の異常、頭痛、肩こり、便秘、目の下のクマなど
血虚(けっきょ):めまい、貧血、不眠、肌の乾燥、脱毛など
体液
(血液を除く)
水毒(すいどく)・水滞(すいたい):むくみ、めまい、頭痛、下痢、排尿異常など

漢方では、「証」と「気・血・水」の要素からその人に合った漢方薬を選びます

通常は何種類かの生薬を組み合わせて作るため、1種類の漢方薬でも複数の症状に対して効果が現れます。

組み合わせによっては何十万通りにもなると言われていますが、

製剤として調合され認可されているもの(医療用漢方製剤)は148種類あります。

 

漢方薬の種類と効果

漢方薬にはたくさんの種類がありますので、

ほとんどの人の症状に合う薬がすでに確立した配合の中に見つけられるはずです。

飲み始めて2~3週間しても効果がない場合は、「証」が合っていないなどの原因があります。

漢方では薬が効かない場合、調合が間違っているか、証などの診断がまちがっているなどと捉え、

「薬が効いていない」とは考えないのです。

何百年もの実績に裏付けられ、個々の体質を重視する漢方ならではの考え方です。

ですから、西洋医学では改善できなかった更年期障害の人でも、

自分に合った薬に巡り合えると驚くほど効果があるといいます。

逆に合っていなければ、お腹が緩くなったり、変化が無かったりします。

この点については別項で詳しく述べますね。

生薬について

それでは更年期障害に効果がある生薬を紹介していきましょう。

生薬とは薬効のある植物の根・実・種子などを乾燥させたもので、代表的な生薬は次の6つです。

 

《更年期障害に効果的な生薬の例》
生薬名主な作用
茯苓(ぶくりょう)利尿作用があり、むくみを解消する
当帰(とうき)血の循環を活性化する
芍薬(しゃくやく)筋肉の痙攣を緩和し、血管の働きを順調にする
蒼朮(そうじゅつ)水分代謝を盛んにして、健胃整腸、利尿、発汗作用を持つ
桂皮(けいひ)停滞しているものを動かし、発散させる作用を持つ
地黄(じおう)血中の熱を除去し、血を補う作用がある

(参考:タケダ㈱生薬・漢方薬事典“生薬図鑑”)

漢方薬について

さて、問題は“これらの生薬をどう組み合わせるか”ですが、

8世紀に中国より医学が伝わってから多くの漢方医が試行錯誤を繰り返し、成果を記録・伝承してきました。

その結果、体質や病状によって最大限の効果が発揮でき、

かつ副作用が少ない日本独自の組み合わせを見出してきたのです。

この最良の組み合わせが現存する漢方薬の配合です。

漢方薬に含まれる生薬には促進作用のあるものと抑制作用のあるものの双方が含まれていることもありますが、

これはホットフラッシュの原因といわれる“冷えのぼせ”のように相反する複雑な症状に向いています。

つまり、どちらかの要素が強く出た時にそれを抑える方向に働く薬を配合しておくことで、

更年期特有の“ゆらぎ”に対応できるというわけです。

漢方薬が更年期障害のような複雑な要因が組み合わさって生じる不定愁訴に適しているのは、

複数の生薬の組み合わせに理由があるわけですね。

 
本来は配合に従って組み合わせた生薬を煮出し、“煎じ薬”として飲んでいたのですが、

最近では粉末化または錠剤化したものが流通し、飲みやすく手間いらずになっています。

特に更年期障害に処方される代表的な漢方薬を紹介しましょう(参考:ツムラ㈱)。

《更年期障害に効果がある漢方薬》
名称効果のある症状含まれる
生薬の数
当帰芍薬散
(とうきしゃくやくさん)
体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、
疲労しやすい人の更年期障害、むくみ、冷え症など
6種
桂枝茯苓丸
(けいしぶくりょうがん)
比較的体力があり、肩こり、頭痛、めまい、
のぼせて足冷えなどのある人、更年期障害、肩こりなど
5種
加味逍遥散
(かみしょうようさん)
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、
疲れやすく、精神不安やいらだちのある人の
更年期障害、不眠症など
10種
桃核承気湯
(とうかくじょうきとう)
比較的体力があり、のぼせて便秘しがちな人の
月経不順、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、
高血圧に伴う症状(頭痛、めまい、肩こり)など
5種
温経湯
(うんけいとう)
体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわく方の
更年期障害、不眠など
12種

上から3つは「婦人科3大処方」と呼ばれるほど効果が高く、

更年期障害に対してよく処方される漢方薬として有名です。

さらに下の2つを加えて「5大婦人科漢方薬」と称されることもあります。

漢方薬に適している人

重い更年期障害…特にホットフラッシュで悩んでいる場合にはホルモン補充療法が高い効果を示します。

1週間程度で効果が現れ、ホットフラッシュに伴う不眠や頭痛など複数の症状も改善されるので、

非常に有効な治療法です。

ただし、ホットフラッシュ以外の症状の人には効きにくく、

懸念される副作用や、既往歴によっては使用できない人もいます。

その点、漢方薬は次のような人に向いていると言えるでしょう。

《漢方薬に適している人》

  • 重症ではないが更年期障害に悩んでいる(特にホットフラッシュ以外の症状)
  • 副作用に不安がある人
  • ホルモン補充療法を受けられない人

漢方薬を試してみてからホルモン補充療法を受けてもいいですし、

投与するホルモン剤を少なめにしてもらって、

漢方薬を併用しながら症状をコントロールするという方法もあります。

 
漢方薬には対症療法だけでなく、体の根本にある不調に油をさす潤滑油的な作用もあります。

閉経は誰もが迎えるものですが、それにまつわる体の変化がスムーズに行われるように漢方薬を利用する…

というのも1つの方法ではないでしょうか。

 

服用期間は?

まずは2~3週間、欠かさず飲んでみてください。

「長い!!」と思うかもしれませんが、

更年期障害のような慢性的な症状には少しずつ効果が現れる傾向があります。

…とは言っても、中には1回の服用で効果が現れる症状もありますから、一概にはいえません。

冷え性などの悩みには2週間くらいで効果を感じる人が多いようですよ。

ただし、2~3週間服用しても効果が実感できない場合は、

その薬が自分に合っていないと判断し、別の漢方薬に変える相談をしましょう。

 

入手方法

漢方薬には病院で診察を受けたうえで受け取る「処方薬」と、

ドラッグストアや薬局などで買える「市販薬」とがあります。

それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分が良いと思う方を選ぶと良いでしょう。

処方薬(医療用漢方薬)

医療用漢方薬とは医師が診察した上で処方する漢方薬で、現在、日本では148種類あります。

顆粒タイプが主流で「ツムラの何番」のように

番号で呼ばれるものを見たことがある人も多いかもしれません。

 
一番のメリットはほとんどの場合、保険がきくということ。

医療用漢方薬は医師の処方箋に基づいて調剤する薬として扱われるため、

薬剤師がいる調剤薬局で受け取る“保険適用薬”となります。

また、処方薬なので市販薬とは成分の量や強さに違いがあり、効果が現れやすいという点も魅力です。

一方のデメリットは、診察を受けなければ入手できないということ。

忙しい人は病院へ行く時間を作るのも大変ですね。

これを定期的に行わなければ継続して漢方薬を服用することができませんので、

大きな負担となるかもしれません。

また、更年期障害が重い人も外出が困難な場合があります。

手軽に入手できないという点は否めませんが、

価格や効果を重視するなら処方薬をもらいに行く方が良いと言えるでしょう。

市販薬(一般薬)

ドラッグストアや薬局などで購入できる漢方薬は、処方箋の必要がない“一般用”として区別されています。

現在ではどこのお店にも漢方薬のコーナーがあり、

ツムラ」「クラシエ」などのメーカーで製造された漢方薬が豊富に取り揃えられています。

店舗によっては24時間購入可能なところも、インターネット販売しているところもありますね。

薬が合わなかったら気軽に変えられるのも嬉しい点です。

また、ビタミンなども配合された生薬製剤タイプもあります。

市販薬のメリットはこういった手軽さにあると言えるでしょう。

 
一方のデメリットは保険がきかないため、処方薬の数倍以上を自費負担しなければなりません。

また、数多くの漢方薬の中から自分の症状に合ったものを自分で選ばなければならない大変さもあります。

最近はインターネットで最適な漢方薬を見つけるためのサイトも多くありますから、

これらを利用して調べたうえでお店に行くと安心です。

 

注意点

漢方薬は自然のものだから安心…と考えるかもしれませんが、自然の中にも毒物はあります。

生薬も同様で、1つ1つに薬効があり、

その量や強さを加減する配合や組み合わせがなされているのが漢方薬です。

ですから、正しい使い方、選び方をしなければ害になることもあります。

説明を読み、指示に従って服用するようにしましょう。

以下に、特に注意すべき点について触れておきますね。

副作用

西洋医学の薬に比べれば少ないですが、副作用がゼロなわけではありません。

配合された生薬にもよりますが、現れやすい副作用には

  • 腹痛・嘔吐・下痢
  • 血圧上昇・動悸
  • 発汗・のぼせ
  • 発疹

などがあります。

体質に合わない漢方薬を飲むと、副作用が現れることもあります。

漢方薬を飲み始めてこれらの症状が現れた場合は服用を中止し、

医師・薬剤師に相談の上、別の薬に変えてみましょう。

また、まれにですが肝機能が低下することもあります。

このため、処方薬を服用している人は、漢方薬の種類によって数か月~年に1回程度、

定期的に血圧や血液検査などのチェックをすることもあります。

 
さらに注意しなければならないのが、漢方薬の飲み合わせです。

通常、漢方薬には複数の生薬が配合されているので、1種類の漢方薬で複数の症状を治すように選びます。

ただし、場合によっては漢方薬を2種類以上飲むこともあります。

このようなときは「同じ生薬多量に重ならないか」ということに注意する必要があります。

中でも「甘草」は保険適用の漢方薬の約7割に含まれているため重複しやすいのですが、

多量に摂取すると“偽アルドステロン症”という重い副作用(血圧上昇、むくみなど)が起こる場合があります。

 
また、西洋薬と漢方薬の併用は基本的には問題ないとされていますが、

場合によっては効果を相殺してしまうこともありますので、

服用中の薬がある時は医師に申告しておきましょう。

専門家の少なさ

中国や韓国では西洋医学と伝統医学について医師・薬剤師は教育課程が別であり、免許も別になっていますが、

日本ではどちらも区別なく扱える現状にあります。

このため、漢方薬の処方箋を出したり調剤したりすることはできても、

残念ながら専門的な知識をもっているとは限りません

このため、民間機関が認定している資格を持っているかどうかが知識の深さを測るカギとなります。

 
医師に関しては、日本東洋医学会により1989年に専門医認定制度が発足し、運用されています。

これは医師資格取得後の年数や研修数、臨床報告数、試験などにより、

認定医」か「漢方専門医」を取得することができるというものです。

ただし、後者は『日本東洋医学会認定 漢方専門医』として広告することが可能ですが、前者はできません。

 
一方、薬剤師には、日本薬剤師研修センターと日本生薬学会の連名で認定を受ける

漢方薬・生薬認定薬剤師」という制度があります。

漢方薬・生薬に関する専門的な知識を修得し、

その能力と適性を持っている薬剤師であることを認定する資格です。

 
前述の通り、漢方薬を選ぶにはまず「証」を考えなくてはなりませんから、

この知識を持つ認定医師・薬剤師なら適切な漢方薬を選んでくれる可能性が高まりますね。

医師の処方なら間違いないと言い切れないのが現在の医療制度ですが、

漢方薬が見直されていることもあり、熱心な医療従事者も増えています。

もっと専門家を…というのであれば、病院ではなく「漢方薬局」を訪れるという方法もあります。

経験豊富な薬剤師に相談してみるのも良いでしょう。

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