更年期障害

運動で更年期障害を予防・改善する方法

運動

運動」というとダイエットや体力増進のイメージがありますね。

しかし、近年の研究で、運動が更年期障害の予防や改善にも大きく役立つことがわかってきました。

ここでは更年期障害に対する運動の効果について、

そのメカニズム効果のある症状注意すべき点について解説します。

 

更年期障害と症状

更年期障害は、加齢による卵巣の機能低下が原因と考えられています。

卵巣からは女性ホルモン「エストロゲン」が分泌されていますが、この分泌量が低下することにより、

それを司っている脳の視床下部が混乱をきたし、

同じく支配を受けている自律神経をコントロールできなくなってしまいます

自律神経とは体の様々な調節を行っている神経で、

この働きにより、体温や水分、他のホルモンや神経伝達物質の分泌量などが最適に保たれ、

体の「恒常性(ホメオスタシス)」が維持されているのです。

しかし、更年期に入って自律神経が不調になるということは、

この恒常性を保ちにくくなることにつながります。

すると、更年期症状と呼ばれる特有の体調不良が現れてきます。

 
更年期の症状のうち最も多く見られるのはホットフラッシュほてり、のぼせ、多汗)で、

これは血管系をコントロールする自律神経の不調により引き起こされます。

また、同様の原因で冷え、肩こり・腰痛・関節痛、頭痛、頻尿などの症状も現れやすくなります。

一方、身体だけでなく精神に影響が見られるケースも多くあり、

更年期には“性格が変わってしまう”というほど大きな精神的変化が見られる人もいます。

自分でも抑えられないイライラ感や、

突然何もする気が起きなくなる憂うつ感倦怠感なども更年期の代表的な症状です。

これらの身体的・精神的な症状のうち、日常生活に支障が出るものを特に「更年期障害」と呼んでいます。

 

更年期障害の時期と背景

更年期は「閉経を挟んだ前後5年間ずつ」を指します。

日本人の場合は平均閉経年齢が50歳ですから、45~55歳に該当する人が多いということになります。

しかし、卵巣の機能が低下しはじめれば、いつ更年期障害がおこっても不思議ではなく、

その時期には個人差があるため、人によっては40歳前後から症状が出始める人もいます。

最近では晩婚化・少子化の影響のためか若年性の更年期障害を発症する人も増えており、

30代半ばという人も珍しくはありません。

 
しかし、更年期障害は「卵巣の機能低下」だけが原因ではない…という報告もあります。

これは、月経不順や無月経の若い女性もエストロゲンが低下した状態が続いているのに、

更年期と同じような症状が見られないからです。

 
そこで、更年期を迎える年齢にも要因があるのではないかと考えられるようになりました。

40代・50代の女性は育児は一段落していますが、

子供の反抗期、進学・就職に対してやきもきする時期ですね。

さらに、夫の転職や退職、夫自身に対する不満、老後の不安を感じることもあるでしょう。

もしかしたら、近親者の死に直面したり、夫や自分の両親の介護も背負ったりしているかもしれません。

こういったライフステージにさしかかる“更年期世代”の女性は、

自分や家族の大きなストレスを一手に抱え込んでいると言っても過言ではありません。

そして、このストレスがその人の性格や性質と相まって、

更年期症状を起こしているのではないかと考えられているのです。

事実、ストレスに対する個人の考え方が更年期の症状に関わっているというデータはたくさんあります。

心配性な人、ネガティブな人、神経質な人ほど

更年期障害が重くなりやすい傾向にあることが示唆されています。

 

運動の予防的効果

淑徳大学看護学部・河野教授の更年期世代の女性を対象とした研究に、興味深いデータがあります。

40~59歳の女性309人を対象に、最近1年間と30歳代の 生活習慣と更年期症状の関連について検討したところ、

30歳代の食生活、生活リズム、喫煙、趣味、休養、疲労、睡眠およびスポーツが更年期症状と関連しており、

スポーツをしていなかった人は更年期症状発症者が有意に高かった…というものです。

また、最近1年間では食生活、生活リズム、飲酒、睡眠、疲労、家族との交流、気分転換、自由時間が

更年期症状と関係していたそうです。

つまり、今現在もさることながら、更年期に入る前の生活スタイル

更年期の健康に関係してくるということですね。

加えて、最近1年間では“家族との交流”“気分転換”“自由時間”など、

周囲とのかかわり方や自分の心の在り方、リフレッシュの仕方など

「精神面」での要素が多くなる傾向も見られます。

これらも一朝一夕に成されるものではなく、

更年期以前の家族との関係性や趣味・余暇の使い方、性格などに左右されます。

つまり、更年期症状は40歳半ばあたりに訪れるものではありますが、

発症の要因がエストロゲンの減少だけにあるわけではなく、

それまでの生活習慣や培ってきた関係性、作られてきた性格などにも起因すると考えられるわけです。

 
逆にいうと、若い頃からの生活習慣を整え、家族や周囲との良好な関係を保ち、

前向きな考え方を持てるように心掛ければ、

将来の更年期障害の発症リスクを軽減することができると考えられます。

ただし、すべてを自分の意思だけで改善することは難しいですね。

しかし、更年期障害との関連性が窺える研究データのうち、

「スポーツ」への取り組みは簡単に実行することができます。

また、運動によってストレスを発散することで、家族との良好な関係性を維持できる可能性もあります。

若いうちからスポーツに親しんだ人は

一生にわたって何らかの運動を続けていく傾向があると言われていますので、

自分だけでなく、娘がいるなら来るべき更年期の健康のために運動の習慣づけをしてあげましょう。

 

運動の効果と改善できる症状

更年期障害の治療のために病院へ行くと、ホルモン補充療法を勧められることがあります。

京都府立医科大学大学院・北脇助教授によると、

この治療法はホットフラッシュとそれに伴う睡眠障害やうつ症状などには有効であるものの、

ホットフラッシュを伴わないうつ症状・睡眠障害や頭痛・腰痛・耳鳴り・肩こり・尿漏れなどの症状には

有効でないという大規模調査が報告されているそうです。

 
そこで、薬物療法以外の治療法として注目を浴びているのが「運動療法」です。

運動には予防的効果もありますが、更年期障害がある人が運動を行うと症状の軽減や改善に効果があるのです。

実際、更年期症状に及ぼす生活環境要因の調査では

「運動をしている者はしていない者より症状が軽い傾向にある」という報告が各国からされており、

医療機関でも積極的な運動をするように指導する医師も増えてきています。

ただし、一過性の運動では効果が見られないという報告もあり、継続して行うことが必要です。

では、更年期障害の改善に対して運動がどのような効果をもたらすのか、

もう少し具体的に見ていきましょう。

ストレス解消による精神症状の改善

運動による更年期障害の改善効果が最も高いのは、

不安感、憂うつ感、倦怠感などの精神症状といわれています。

山口大学・上田真寿美准教授らによると、

運動が女性ホルモンなどへ影響した結果として更年期症状が軽減するとは断言できないが、

運動の心理的(更年期症状の精神神経系症状)な効果については運動がストレスを軽減することによって

自律神経中枢のホメオスタシスの維持に好ましい循環を促進している、といえるそうです。

これにより、運動が日常生活に支障をきたすほどの更年期障害を軽減して

QOL(生活の質)の向上に果たす役割は大きいと言えますね。

 
前述の通り、更年期障害の発症にはエストロゲンの減少だけでなく、

性格や精神状態なども深く関わっていることから、

運動によるストレスの解消が精神面の安定を招き、症状の改善につながっていることは容易に推測できます。

事実、多くの年代で運動がストレスを発散させ、不安感などを払拭する効果があることがわかっています。

更年期障害がある人なら、その効果によって自律神経の不調が改善され、

ホルモン補充療法では効果が見られにくい症状も軽減したり改善したりできる…というわけですね。

特に、ホットフラッシュを伴わない憂うつ感や倦怠感などの精神症状で悩んでいる人は、

運動療法を試してみると良いでしょう

自律神経調整による身体症状の改善

前項でも触れましたが、運動にはストレスの解消によって精神的な安定性をもたらし、

自律神経の調整力を回復させる効果があります。

もともと更年期障害は卵巣の機能低下が引き起こす“自律神経の不調”による体調不良が主たる症状ですから、

運動によって自律神経が様々な調節機能をコントロールできるようになれば、

症状が改善できるというわけです。

ホルモン補充療法ではホットフラッシュにまつわる症状を大きく改善する効果がありますが、

人によっては運動だけでも症状が軽くなることもあります。

…というのも、ホットフラッシュは血管系の不調により起こる症状で、

体温が上昇していないのに血管が拡張することで“のぼせ”“ほてり”や“滝のような汗”を生じるものですが、

下半身が冷えていたり血行不良を起こしていたりすると発症しやすいと言われています。

しかし、運動によって血液循環を良くし冷えを改善すると、発症しにくくなります

さらに、多汗の症状は普段から運動して汗をかいていると全身の汗腺が活発化しているため、

顔周辺に汗が集中することがなくなるので、予防することができます。

また、“頭痛”の症状も血液循環と関係があります。

頭痛には急激に血管が膨張して周囲の神経を圧迫するものと、

筋肉が緊張して血流が悪くなるためにおこるものとがあります。

どちらも自律神経系の不均衡から起こりやすいものですが、

これが改善して脳への血液供給が適正に行われ、筋肉の緊張がほぐれると、頭痛を起こしにくくなります。

このように、運動には精神的症状だけでなく、身体的症状に対しても優れた効果があります。

まずは運動療法を試してみてから、薬物療法を始めてもいいかかもしれませんね。

良質な睡眠の促進

更年期障害には「不眠」の症状もあります。

この原因には夜間に起こる“ホットフラッシュ”や、めまい、頭痛といった身体的なものや、

心配事や不安感、憂うつ感などの精神的なものなど様々あります。

しかし、運動によって血液循環がアップし、ストレスを解消したリ気分転換ができたりすると、

これらの症状を軽減することができます。

加えて、適度な運動は心地よい疲れから、自然と眠気へと誘います。

これらの効果によって、運動には良質な睡眠を促進する効果があるのです。

 
睡眠中は脳と体のメンテナンスの時間でもあります。

きちんと睡眠を取ることは心身の機能を回復させ、翌日を快適に過ごせるかどうかに影響します。

更年期障害によって寝不足が続けば、それによる頭痛や疲労が起こることも考えられますね。

運動して気持ちよく眠れるように心掛けるだけでも、体調が整ってきますよ。

 

適した運動とは?

確かに運動には様々なメリットがありますが、

どんな運動でも効果があるかというと決してそうではありません。

ハードな運動は筋肉を増強する効果は高いのですが、

筋肉を傷めながら行うため、疲労から回復するのに時間を要してしまいます。

更年期障害の改善と、それを行う年齢体調などを考えると、

最も適した運動は「有酸素運動」といえるでしょう。

 
有酸素運動とは体内の糖質と脂質を酸素で燃焼させることでエネルギーを得る運動法です。

一般的に長く続けられる運動が有酸素運動とされており、

例えば“走る運動”で考えると、数十秒で走り切る“短距離走”は無酸素運動ですが、

数十分以上かけて走る“ジョギング”は有酸素運動となります。

有酸素運動のメリットには、

  • 体への負荷が少ない
  • 心肺機能を高め、血液循環を良くする
  • 不安や抑うつ感を軽減する
  • 骨粗しょう症、冠動脈疾患、高血圧、大腸がん、2型糖尿病など慢性疾患の発症率が低下

があります。

更年期障害と関連するものがたくさんありますね。

もちろん、糖質と脂肪を燃やしてくれますからダイエットにも有効なので、

若々しさを保ちたい女性には一石二鳥です。

有酸素運動には先ほどのジョギングのほか、

ウォーキング、サイクリング、エアロビクス、水泳などが該当します。

自分の筋力や体力に合わせて選んでくださいね。

忙しい女性でも、通勤や買い物などを上手に利用して取り組んでみましょう。

ポイントはできるだけ毎日、30分程度は行うことです。

ただし、体調が悪いのに無理して行ったり、運動することをプレッシャーに感じたりするのも良くありません。

初めは短く、徐々に長く習慣化できるように挑戦してみてくださいね。

 
一方、注意したい点もあります。

更年期の女性は、エストロゲンの低下により骨の代謝が悪くなっています

このため、骨密度が低下し、気づかぬうちに「骨粗しょう症」になっている人も多いのです。

骨粗しょう症になると、骨が軽石のようにスカスカになり、とても折れやすい状態になってしまいます。

ですから、足腰に負担がかかりすぎると疲労骨折を起こしたり、

ちょっと転んだだけでも骨折したりといった危険が増すのです。

しかし、有酸素運動には骨粗しょう症予防のメリットもあります。

怖がって運動をしないのは逆効果です。

心配がある人は、ジョギングよりも足腰の負担が少ないウォーキングにしたり、

ジョギング用のクッション性のある道を選んで行ったりすると良いでしょう。

また、水泳や水中ウォーキングは浮力によって負荷が軽くなるのでおすすめです。

最近は健康診断時に骨密度を測定してくれるところも多いので、検査を受けてみるのもいいですね。

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