高血圧・動脈硬化

〝しびれ”は危険のサイン 高血圧がもたらす合併症について

高血圧は自覚症状に乏しいものの、命に関わる合併症が多いため「サイレント・キラー」と呼ばれています。

そんな合併症の症状の1つが「しびれ」。体からのSOSのサインです。

ここでは高血圧としびれの関係について、原因合併症の可能性、

改善する方法などをわかりやすく解説しています。

 

高血圧に伴うしびれ

しびれ」は日常的に起こるので、珍しくはないですね。

でも、「なぜしびれるのか」と言われると、正確に答えるのは難しいかもしれません。

また、高血圧としびれがどのように関係するのかも、イメージしにくいでしょう。

まずは、この2点について触れておきましょう。

しびれとは?

しびれ(痺れ)とは麻痺の一種で、一時的なものも継続的なものもあります。

正座をしたときに起こるしびれは一時的なものの代表格で、数分もすれば元に戻りますね。

でも、しびれがおこる長さに差はあっても、その原因は共通なんです。

しびれの原因…それは、血液の流れが滞ったために中枢神経・末梢神経に障害が起こるからなのです。

神経に影響するので力が入らなかったり、

思うように動かせなかったりといった機能障害が起こるわけですね。

中には、骨などで直接的に神経が圧迫されたことによって起こるしびれもありますが、

これは「神経炎」であり、高血圧とは無関係です。

また、診断する際には、しびれの症状だけで原因となる病変を特定することはせず、

しびれに伴って現れる他の症状と併せて行われます。

ですから、しびれの症状がある場合は、他の部分の異変についても注意深く観察しておくことが大切です。

高血圧でしびれが起きる理由

では、高血圧としびれにはどのような関係があるのでしょうか?

それには、まず血圧について知っておきましょう。

 
血圧とは、血液を全身に送り出すための力が血管に加える圧力です。

一般的に、血圧を医療機関で測定した際に、

収縮期血圧(最高血圧)が140㎎HG以上、拡張期血圧(最低血圧)90㎎HG以上

両方または片方でも該当すると「高血圧」と診断されます。

では、なぜ血管内の圧力が高まって「高血圧」になってしまうのでしょうか?

心臓などの病気が原因となる「二次性高血圧」を除き、ほとんどの高血圧の根本的な原因は不明です。

これを「本態性高血圧」と言います。

原因は不明ですが、高血圧になりやすくする要因には、

  • 肥満(食べ過ぎ、飲み過ぎ)
  • 塩分の摂り過ぎ
  • 運動不足

などがあることがわかっています。

これらによって高血圧になると、血管の内壁が常に高い圧力にさらされることによって負担がかかり、

内壁が傷つけられてしまうのです。

正常であれば内壁には弾力性があり、

内壁の細胞からは血液が付着するのを予防する物質が放出されていて、

スムーズに流れるようになっています。

しかし、内壁が傷つくと、その部分にLDL(悪玉)コレステロールが入り込み、

これが酸化されると、それを取り除こうとして白血球の一種「マクロファージ」が集まってきます。

そこでマクロファージが死んでしまうと、コレステロールや脂肪の残骸が残り、

これによって血管の内壁が分厚くなってしまうのです。

そのため、血管は柔軟性を失い、細くなってしまいます

これが「動脈硬化」です。

この部分に、体のどこかでできた血栓(血管の中にできた“かさぶた”のようなもの)が剥がれ落ちて、

流れてきたものが詰まってしまうことがあります。

そうなると、そこから先の血管へ血液が進めないため、

周囲の細胞に酸素や栄養分を届けられなくなってしまいます

このため神経にも障害がおこり、“しびれ”という感覚をもたらすのです。

特に、神経の中枢である脳で動脈硬化が進み、脳血管障害が起こった場合は、

手や足のように離れた部位にも影響が出て、しびれを感じることがあります。

これについては次項で詳しく述べますね。

 

合併症について

前述の通り、しびれは高血圧によって起こるのではなく、

高血圧によって生じた動脈硬化が引き起こす「血管障害」によって生じるもの

であることがお分かり頂けたと思います。

このような血管障害は、高血圧に伴う合併症としていくつか知られています。

代表的なものについてしびれの部位や他の特徴と共に紹介しましょう。

 

《しびれを伴う高血圧の主な合併症の特徴》
合併症しびれが多く
見られる部位
他の症状
抹消動脈疾患
(PAD)
手・足
(痛みを伴う
ことも)
しばらく歩行した後のお尻・太もも・ふくらはぎの痛み、
皮膚の潰瘍、壊死など
糖尿病
(2型)
手・足便秘、喉の渇き、多飲、頻尿など
脳血管障害
(脳梗塞、
脳出血)
片側の手や足
手と口
※布で隔てられているような感覚
半盲、
脳梗塞ではめまい・ろれつが回らない・物が二重に見えるなど、
脳出血では頭痛・吐き気・意識障害など

それぞれ詳しく見ていきましょう。

末梢動脈疾患(PAD)

抹消動脈疾患は、

以前は「閉塞性動脈硬化症」「下肢慢性動脈閉塞症」とも呼ばれていた疾患です。

発症する原因の多くは動脈硬化によるもので、

主に手足へと向かう“末梢動脈”の腹部大動脈から下肢動脈で血液の流れが悪くなったり、

血管が詰まったりすることで発症します。

そのため、筋肉などに酸素や栄養を届けられなくなってしまい、

手足のしびれ・痛みしばらく歩行した後のお尻・太もも・ふくらはぎの痛みなどを感じるようになります。

進行すると痛みの持続時間が長くなり、安静にしていても痛みを感じるようになります。

さらに、悪化すると皮膚に潰瘍壊死をおこすこともあり、

足を切断する可能性もあるという放置すると危険な病気です。

しかし、足の動脈の脈を診たり、足の血圧(足関節血圧)を測定したりすることで診断が可能で、

適切な治療を受ければ進行を防げる病気なので、医師の指示に従い治療を受けましょう。

 
抹消動脈疾患の患者は、約600万人以上と推測されていて、

50%以上の高い確率で心筋梗塞などの心臓病を発症し、死亡するリスクがあるという報告があります。

原因となる動脈硬化は加齢によってもおこりますが、高血圧の人はより発症する危険性が高くなります

また、次項で触れる「糖尿病」によっても発症しやすくなります。

生活習慣には十分に気をつけましょう。

なお、日本血管外科学会によると、足のしびれや冷感は、

末梢動脈疾患ではなく別の病気(腰部脊柱管狭窄症や糖尿病など)の可能性もあるとのことですので、

医療機関で診断してもらうようにしましょう。

糖尿病(2型)

糖尿病とは、血糖値(血液中のブドウ糖量)が常に高い状態になる病気です。

自己免疫疾患などによる「1型」もありますが、

日本では90%以上が肥満・喫煙・運動不足など生活習慣が引き起こす「2型」です。

 
糖尿病では手足のしびれ便秘なども症状として現れますが、

自覚症状として認知されず、見落とす人も多いようです。

さらに血糖値が高くなると、喉の渇き多飲頻尿といった典型的な症状が見られます。

高血圧は合併症として糖尿病を併発するリスクが非常に高く、

糖尿病患者の約50%は高血圧症と言われています。

 
では、糖尿病の症状としてしびれが起きるのはなぜでしょうか?

血液中の血糖の量が多い状態が続くと、

体内のタンパク質が糖によって変性するという現象(糖化)が起こりやすくなります。

これによって、血管を構成するコラーゲンなどのタンパク質も糖化をおこし、

これが動脈硬化の原因となるのです。

動脈硬化は血圧を高める原因にもなりますし、

血圧が高ければ血管に負担がかかって動脈硬化を進行させやすくなるという悪循環に陥ります。

その結果、動脈硬化が進行し、

手足などの細い血管でおこると神経細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなり、

糖尿病でもしびれや神経障害がおこるのです。

 
糖尿病も高血圧も、生活習慣を改善することで予防や治療が可能です。

次項のような重篤な合併症にかかる前に、自分の生活を見つめ直し、

少しでも早い段階で改善できるようにしていきましょう。

脳血管障害

高血圧による合併症のうち、最も重篤な病気が「脳血管障害」です。

一般的には「脳卒中」とも言いますが、正式には脳血管障害と言い、

脳梗塞」「脳出血」などの総称です。

脳血管障害の原因には色々ありますが、

多くは長年の高血圧により進行した動脈硬化によって血管が詰まってしまったり(脳梗塞)、

破れてしまったり(脳出血)することで起こります。

 
脳梗塞や脳出血は、血管の詰まりや破裂によって、

その先に血液を供給できなくなるために脳細胞が壊死してしまう病気です。

この壊死した部位によって神経障害がおこり、しびれを感じることがあるのです。

脳血管障害は手足の麻痺や言語障害など後遺症があるものも多く、命に関わるケースも少なくありません。

次のような症状が見られることが多いので、すぐに病院へ行きましょう。

  • 手や足片側がしびれる
  • 手と同時に口にもしびれが現れる
  • しびれは激しいものではなく、薄い布で隔てられているような感覚

脳の中では手の神経と口の神経を司る部位が近接しているため、

脳血管障害によるしびれは手と口の両方、しかも片側だけに現れやすい特徴があります。

口のしびれとは、水を口に含んでもきちんと閉じることができず、口元から垂れてしまうような状態です。

歯医者さんに行って麻酔を受けたときに似ていますね。

また、目にも「半盲」といって視界の半分だけしか見えなくなる症状を起こすこともあります。

脳梗塞・脳出血の症状に大きな違いはないと言われていますが、

比較的、脳出血の方が強い症状が表れ、頭痛や吐き気、意識障害なども併発することが多いようです。

また、「しびれ」の感覚は正座をしたときのようなビリビリしたものではなく、

脳血管障害の場合は“手袋をはめているような”・“薄い布で一枚隔てているような”感じになります。

いずれも脳血管障害の特徴ですが、必ずしも当てはまるとは限らないことも覚えておきましょう。

 
また、脳梗塞には前触れのような「一過性脳虚血発作」が起こることがあります。

これには一時的におこる短時間(およそ数分間)のしびれめまい

ろれつが回らない物が二重に見えるなどの症状があります。

この症状が起きた人は高い確率で脳梗塞を発症すると言われています。

違和感があったら、すぐに病院へ向かいましょう。

 

改善の方法

高血圧による動脈硬化が進んでしまい、合併症を起こしてしまうと改善させるのは難しくなってしまいます。

少しでも軽度のうちに高血圧を改善し、動脈硬化の進行を防ぐようにしましょう。

 
高血圧を起こす要因には、前述したものを含め、次のようなものがあります。

  • 加齢による血管の老化
  • 肥満(食べ過ぎ、飲み過ぎ)
  • 塩分の摂り過ぎ
  • 運動不足
  • 精神的ストレス
  • 過労
  • 遺伝

高血圧の傾向がある人は、今一度、生活を見直してみましょう

油っこい食事や糖分の摂り過ぎに注意し、塩分も控えるようにしましょう。

濃い味付けは食べ過ぎる原因にもなるので、減塩は肥満防止にも役立ちますよ。

そして、できるだけ積極的に体を動かすようにしましょう。

過労やストレスも自律神経を乱し、血圧を上げてしまうので、

適度な休息とストレス解消の時間を意識的に設けられるといいですね。

また、高血圧には遺伝的要因も大きいと言われています。

身内に高血圧症の人がいるのなら、若いうちから以上の点に気をつけた生活を心掛けましょう。

 
そして、大切なのは高血圧を放置しないということです。

医師の指示に従って、必要であれば降圧剤(血圧を下げる薬)を服用するようにしましょう。

また、血圧を下げる効果はありませんが、しびれの症状には「漢方薬」を利用する方法もあります。

代表的なものには、

  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)
  • 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
  • 加味逍遥散(かみしょうようさん)

などが挙げられますが、他にもたくさんの種類があります。

漢方薬には医師による処方薬とドラッグストアなどで買える市販薬がありますが、

自分の体質に合ったものを選ばないと効果が得られないので、医師や薬剤師に相談してみましょう。

 

女性特有の高血圧としびれ

実は、動脈硬化以外でもしびれを生じることがあり、

その1つに自律神経のバランスが崩れる「自律神経失調症があります。

自律神経の1つ“交感神経”の興奮によって筋肉が緊張し、血管が収縮して血流が悪くなってしまうからです。

自律神経はこのような形で血圧や全身の血流に影響を与えるため、

手足などの末端部のしびれと同時に頭痛肩こりを訴えることも多く見られます。

そして女性にこういった症状がみられる場合、

自律神経失調の原因に「更年期障害」が関係していることがあります。

女性ホルモンの急激な減少に伴って発症するものですが、更年期に特有の症状には「しびれ」の他にも

「月経不順」「ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、多汗)」「めまい」「冷え」などがあります。

また、同様の理由で更年期以降は血圧が上がりやすくなることもわかっています

更年期症状による自律神経の失調でしびれを起こすだけでなく、

高血圧による動脈硬化によってもしびれが起きやすくなるわけですね。

このように更年期世代の女性はしびれの要因が重なりやすいということを知っておくと良いでしょう。

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