高血圧・動脈硬化

塩分制限は必要か!?高血圧の人の塩分の摂り方

高血圧といえば減塩」というくらい、血圧と塩分の関係は広く認知されています。

しかし塩分の目安量については諸説あるあり、高血圧の人にとっては判断に悩むところです。

そこで、ここでは塩分が血圧に影響を与える理由や害とともに、

減塩の目安量や上手な方法について紹介していきます。

 

塩分が血圧に悪い理由

「塩分」とは何かと聞かれたら、

しょっぱさの元となる「塩(食塩)」と答える人も少なくないかもしれません。

でも、正確に言うと、塩分とは食塩そのもののことではありません。

問題になるのは食塩に多量に含まれるNa(ナトリウム)なのです。

そして、私たちはナトリウムを食塩以外の物質からも摂取してしまいます。

わかりやすいのが、「化学調味料」や「だしの素」です。

これらは「旨味」の構成要素となる物質(アミノ酸塩)を含んでいて、

舐めるとコクのあるしょっぱさを感じることができます。

この中にナトリウムも含まれているんですね。

 
では、なぜナトリウムが高血圧に良くないのでしょう?

それは、“ナトリウムが血液(体液)の量を調節してしまうから”なのです。

実は、私たちの体の細胞は、“半透膜”という小さな穴が開いた膜でできていて、

大きな分子は通さず、水のように極小さい分子だけが通過できるようになっています。

これによって、物質の勝手な移動を制限しているわけです。

ところが、濃度が高い液と低い液が半透膜を隔てて存在すると、

濃度の低い方から高い方へと水だけが移動して薄めるように働く“浸透”という現象がおこります。

仮に、しょっぱい食事を摂って、血液中のナトリウム濃度が高くなったとしましょう。

血管壁も半透膜でできていますから、濃度の高い血液を薄めようと、血管外の水分を血液中に取り込み、

体からも水分が排出されないように尿も制限されるようになります。

こうなると、血液の量は薄めるのに必要とされた水の分だけ増えることになりますね。

しかし、血管のサイズや長さは変わっていませんから、血管の内側は血液でパンパンになってしまいます。

つまり、血圧が高い状態になってしまうのです。

このため、ナトリウムは血圧を上げる原因物質として、高血圧の犯人的存在とされているわけです。

 

適切な塩分量の考え方

塩分の摂り過ぎによる血液の増加やこれによる血圧の上昇は、正常な血圧の人にもおこる現象です。

時間の経過とともに過剰なナトリウムが体外に排出されれば、血液量も戻り、血圧も下がっていきます。

ところが、高血圧の人の中にはナトリウムの排出がスムーズにいかない人がいます。

実は、高血圧には

  • 塩分の影響を受けやすいタイプ(食塩感受性高血圧)
  • 塩分の影響を受けにくいタイプ(食塩非感受性高血圧)

があるのです。

つまり、食塩感受性なら塩分を控えることで血圧が改善されやすいのですが、

食塩非感受性だと減塩の効果が表れにくい傾向があるのです。

高血圧患者の約半数が食塩非感受性であると言われており、

頑張って減塩しても思うように血圧が下がらないケースも見られます。

しかし、どちらのタイプであったとしても、

高血圧の人は動脈硬化など他の要因もあって既に血圧が高い状態にあるわけですから、

一時的とはいえナトリウムの影響で血圧の上昇を招くことが命取りになるかもしれません。

また、血液量が増加することによって、

これを全身に送り届ける心臓には大きな負担を与えることにもなります。

高血圧の人は普段から心臓に負荷をかけていますから、大きなダメージにもなりうるわけです。

こういった危険性も踏まえて、食塩の摂取量をどのように考えればよいのか、

国内外の情報を紹介していきましょう。

どれを目標にするべきか?

塩分を摂り過ぎると血圧が変動することは、これまでの研究により明らかにされています。

そのため、各学会や機関において塩分摂取に関するガイドラインが示されていますが、

それぞれの考え方や文化の違いなどにより、その数値は同じではありません

代表的なガイドラインを見てみましょう。

 

《塩分摂取に関する各ガイドライン》
国・機関目的塩分の推奨量(目安量)
日本・厚生労働省
食事摂取基準(18歳以上)男性8g未満
女性7g未満
日本高血圧学会高血圧予防
6g未満
アメリカ心血管疾患の予防
3.8~6.0g
WHO(世界保健機関)食事、栄養と生活習慣病の予防
5g以下

※ 厚生労働省では、ナトリウムの摂取を制限するとともに、この排出を促す「カリウム」の摂取を推奨しています。

これをみると、厳しく思える日本高血圧学会のガイドラインも意外と緩いことがわかりますね。

実は、日本人は世界的にも塩分を好む国民で、

平成25年度の国の調査によると1日の平均的な摂取量は女性9.4g、男性11.1gといわれていますから、

もともとの量が多いことがわかります。

海に囲まれた地形、干物・漬物などの食文化が背景にあると思われますが、

どれを目標にして減塩を実行するにしてもかなりの量を減らさなければいけませんね。

1つの結論として

このように複数のガイドラインが存在するのは、現在でもこの問題が医者・科学者の間で多くの論争を招き、

塩分の摂取量をどうすればよいのか、結論が出ていないからなんです。

しかし、一般の人からみれば、果たしてどれを参考にすればよいのか、悩んでしまいますよね。

もちろん、健康状態にも大きく左右されますので、

すでに治療を開始しているのであれば、主治医の指示に従うことをおすすめします。

しかし、前述の通り「食塩非感受性」の高血圧患者もいますから、

やみくもに減塩したところで意味があるのかと思う人もいるかもしれません

 
そのような場合は、まず自分が塩分の影響をどの程度受けているのか、確認することをおすすめします。

つまり、数週間、高血圧ガイドラインが示すように1日6g未満の減塩生活を実行し、

血圧が低下するか試してみるのです。

もし、なかなか低下しないようなら食塩非感受性の可能性が高く、

ナトリウムを排出しにくい体質とみることができます。

この場合は、辛いほど減塩しても、血圧は下がりにくいのが現状です。

嫌気がさすほどの厳しい減塩生活を続けるよりも、程よい減塩生活を送りつつ、

別項で触れるカリウムなどの摂取を心掛けたり減量したりする方が、

血圧を下げる現実的な方法といえるのではないでしょうか。

医師に経緯を説明し、減塩中心ではなく、

運動療法なども取り入れた生活習慣の改善を相談してみても良いでしょう。

 
一方で、すぐに血圧の改善がみられるようなら食塩感受性の可能性が高く、

減塩を心掛けるだけである程度の高血圧の改善ができるということです。

この場合は、やはり減塩生活を送り、血圧が上昇しないようにコントロールすることが必要だと思います。

ただし、どこまで減塩するかは難しいところ。

内閣府・食品安全委員会の佐藤委員長は報道関係者との意見交換会で

「どこまで減らすかは難しい。現状よりやや減塩が現実的な選択だろう」

と説明していますから、本人の日々の血圧の状態や運動の頻度、

肥満の有無などを考慮した食生活を送るようにしましょう。

 
もちろん、健康だとしても生命の維持に必要な量以上の塩分を摂ることは、

多かれ少なかれ健康に害を与えますから、

厚生労働省が推奨する1日7~8gを目指して努力するようにしましょうね。

塩分の必要性

さて、もう一つ注目したいのは日本・WHOの推奨値とも下限値がないことです。

塩分は摂らなくても良いのでしょうか?

 
塩分の主成分である「ナトリウム」は人が生きていくのに欠かせない“必須ミネラル”の1つです。

不足しにくい栄養素なので下限値を設けない国や機関も多くありますが、必ず摂らなければなりません。

なぜなら、ナトリウムは、

  • 血圧の調節(体液の量の調節)
  • 体のpHのバランスの調整
  • 栄養素の吸収や輸送
  • 筋肉や神経の情報伝達

といった重要な働きを担う栄養素なのです。

これらの作用を適正に行うためにナトリウムの濃度を一定に保つ必要があるので、

食事によって体液のナトリウム濃度が高まってしまうと、水で薄める必要性が生じるというわけです。

このようにして、人間の体液は常に約0.85%の塩分濃度に保たれています

 
では、塩分が不足するとどうなるのでしょうか?

これは血液中のナトリウム濃度が低下することを意味しますから、

体は血液から水分を排出してナトリウム濃度を高くして、一定の濃度を保とうとします。

このため血液の総量が少なくなり、体内のバランスが崩れ、

情報伝達や物質の輸送を正常に行うことができなくなります

それによって頻脈・低血圧やこれによる頭痛・めまい・ふらつきなどが起こり、

重症な場合は昏睡状態に陥ることもあるのです。

普通に減塩生活を送っている程度なら危険はありませんが、

減塩生活に加えて大量の汗をかいたり、嘔吐や下痢などを起こしたりしていると、

急激にナトリウムが失われることになるため注意が必要です。

熱中症なども同様ですね。

「敵に塩を送る」という諺や、世界各地で専売的に販売されてきた歴史を考えると、

塩は身近にありながら重要な一面を持つ成分であることがわかります。

“塩は不要”なのではなく、“必要以上に摂らない”ことが大切なのです。

 

塩分の過剰摂取による害

では、日常的に塩分を多く摂取し続けるとどうなるのでしょうか?

まず、血液の量が増えることで血管にかかる圧力が高まり、高血圧になる経緯については既に触れましたね。

この状態が続くと、血管だけでなく、様々な臓器に悪影響を与えることにつながります。

中でも、心臓と腎臓には大きな負担がかかるため、次のような合併症を起こすケースがしばしば見られます。

心臓の合併症

血圧が高いのは血液が流れにくいからなので、心臓はより強い力で血液を送り出すようになります。

強い拍動を繰り返すうち、心臓の壁の筋肉が発達して心臓が大きくなる心肥大」を起こし、

機能が低下する心不全」を起こしやすくなってしまいます。

また、高血圧によって進行しやすい動脈硬化が心臓に栄養や酸素を届ける“冠動脈”で起きてしまうと、

狭心症」や「心筋梗塞」をおこし、命に関わるケースもあります。

腎臓の合併症

腎臓はナトリウムや体内で生じた老廃物を排出する大切な役目をもった臓器です。

これらの不要物は腎臓内の毛細血管を通る時に濾過され、尿として排出されています。

ところが、高血圧によって動脈硬化が腎臓の血管でおこると、

この濾過機能がきちんと働かなくなり、捨てるべき老廃物が再び体内を巡るようになります。

このような状態を「腎不全」といい、むくみだるさなどの症状が現れます。

腎臓は機能が低下すると回復が難しいケースが多いと言われており、

腎臓病からも高血圧が進行するので、気をつけましょう。

 

気をつけたいこと

高血圧の合併症の中には、前項で紹介した疾患のように命に関わるものもあります。

そうならないように少しでも早く高血圧を改善していきましょう。

…といっても、現在のところ、高血圧の治療法は

降圧剤で血圧をコントロールしながら、生活習慣の改善によって血圧を低下させていく」

というものしかありません。

実は、生活習慣のうち、食生活が血圧に与える影響は、

肥満による高血圧などをはじめ、非常に大きいことがわかっています。

中でも、今回触れてきたように、

塩分の摂り過ぎは直接的に血液の増加を招き、血圧を上げてしまう要因となるので、

減塩を心掛けることはとても意味のあることなのです。

 
しかし、「減塩=美味しくない」というイメージがつきものですね。

そして、美味しくない食事を毎日我慢するのは辛いですから、挫折してしまう人も少なくありません

そこで、ここでは減塩でもおいしく食べる工夫や、ナトリウムを積極的に排出する方法を紹介しましょう。

減塩でもおいしく食べる工夫

課題となる“減塩の目標値”ですが、これは前述の通りガイドラインも様々なので、

まずは食事摂取基準の1日男性8g未満、女性7g未満を目指しましょう

平均的な食生活の場合、

「外食」「みそ汁などの汁物(麺類のスープも含む)」「干物・漬物」などを控えるだけで、

3~4分の1くらいは減塩できることが多いんですよ。

あとは、調理につかう塩分を意識的に減らしていけば、目標を達成できます。

でも、これが味気なくて長続きしないんですよね。

そこで、次のような工夫をして食べてみましょう。

調理時に下味をつけず、食べる時に味付けする

下ごしらえの時に下味をつける料理は多くありますが、

人の舌は食材と接した部分の味しか感じ取ることができないため、

食材全体に塩分を馴染ませても、それをすべて味として感じることはできません。

つまり、食材の内側の塩分は摂取量に含まれてしまっても、味付けには影響しないのです。

そして、使用した塩分に対し、舌が感じ取れるのは触れた塩分だけですから薄味に感じてしまうため、

べる時にも何らかの調味料を使うことになるので、結果的に塩分量が増えてしまいます。

下味には調理の効果もありますが、治療として減塩を捉えるのなら、下味をつけるのは避けてみましょう。

その分、食材の表面に集中して味をつけるような食べ方をした方が、

物足りなさを感じずに減塩することができます。

調味料を上手に利用しよう

味付けには様々な調味料を用いますが、これらに含まれる塩分量には違いがあります。

 

《調味料中の塩分量の目安》
調味料 大さじ1杯分(15㏄)の塩分
食塩 15g
ソース 1.3g
しょう油 2.6g
減塩しょう油 1.3g
トマトケチャップ 0.6g
マヨネーズ 0.3g
ドレッシング
(フレンチ)
0.5g
酢、コショウ、
唐辛子、ハーブ類
0g

例えば、食塩そのものをつけるより、しょう油を使う方が塩分を控えることができますし、

ソース・ケチャップ・マヨネーズのように

酸味を含むものは濃厚さのわりに塩分の含有量は少ないという傾向があります。

これを利用してレモンやスダチ・ハーブなどの酸味や香りをプラスすれば無理なく減塩することも可能です。

下味を付けなかった分はこれらを利用して風味を補いましょう

最近では減塩タイプの調味料も数多く見かけるようになりました。

通常タイプのものに比べると、後味に違和感があるので好きではないという人もいると思いますが、

酸味や辛味を加えることで感じにくくする効果もあります。

上手に利用していきましょう。

ナトリウムを積極的に排出する方法 ~カリウムの摂取~

塩分が多い食事をしない方が良いことはわかっていても、たまにはラーメンも食べたいですし、

外食だって付き合わなければならないことだってあります。

「ついつい塩分を摂り過ぎちゃった」というときは、どうすればよいでしょうか?

 
食事によって血液の塩分濃度が高くなると、

水分を引き留めることで濃度を下げる機能については既に触れましたが、

これだと血液量が増え、血圧が上がってしまうのでしたよね。

それならば、摂り過ぎてしまったナトリウムをいち早く体外に出してしまえば良いわけです。

この働きを持つ栄養素が「カリウム」です。

 
カリウムには、腎臓でのナトリウム排出を促進する作用があることがわかっています。

腎臓は血液をろ過して不要なものを尿として排出する臓器ですから、

このときにカリウムが豊富にあると、血液中の余分なナトリウムを速やかに取り除くことができ、

血圧の降下につながるわけですね。

このため、腎臓に問題がなければ積極的に摂ることを厚生労働省も推奨しています。

カリウムは、生野菜、海藻、きのこ類、果物などに多く含まれています。

ただし、調理時に水にさらしたり茹でたりすると溶け出してしまうので、気をつけましょう。

果物はカリウムの摂取には手ごろですが、カロリーが高く太りやすいので、食べ過ぎには注意してください。

血管を収縮しにくくする方法~マグネシウムの摂取

血圧が上がる要因には、血液量の増加のほかに“血管の収縮”によるものもあります。

通常、血管の収縮は、周囲の筋肉にカルシウムが取り込まれ、筋肉が収縮することで起こりますが、

これを抑制し、血圧を上げにくくするのがマグネシウム」です。

なぜなら、カルシウムと同じ“二価の陽イオン”であるマグネシウムが存在すると、

カルシウムの代わりに筋肉に取り込まれるのですが、

筋肉を収縮させる反応は起こらないため、血管も収縮しないからなのです。

このマグネシウムの作用は、降圧剤の一種である“カルシウム拮抗薬”と同じメカニズムによるものです。

アメリカの学会誌には、

サプリメントからの摂取によって血圧降下が認められたという論文が発表されていますが、

食品からも十分に摂取できる成分なので、マグネシウムの豊富な食材を取り入れるようにしましょう。

マグネシウムは納豆やがんもどきなどの大豆製品、アサリ・ハマグリ・カキなどの貝類、

ワカメ・ヒジキなどの海藻類に多く含まれます。

減塩と共に、これらの食材も利用して、上手に高血圧を改善させていきましょう。

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