高血圧・動脈硬化

もはや常識!?牛乳が高血圧を改善する!

「牛乳」というと、健康的だけれど「太りそう」なイメージってありませんか?

肥満は高血圧の大敵ですから、牛乳を敬遠している人もいるかもしれませんね。

ところが、最近の研究で、牛乳が血圧を下げることがわかってきたのです。

ここでは、「牛乳」が高血圧を改善する理由と、上手な牛乳の利用法について、詳しく紹介しています。

 

牛乳の成分と高血圧への効果

牛乳はもともと子牛の栄養源ですから、成長に必要な成分がたっぷりと含まれています。

それゆえに“高カロリー”であり“高栄養”な食品なんですね。

私たちが口にする牛乳は殺菌されていますが、成分は無調整のもの(成分無調整牛乳)が主流です。

そして、牛乳に含まれる成分は栄養面だけでなく、様々な健康効果をもたらすことがわかっています。

それでは、これらのうち特に高血圧の改善効果を持つものを紹介していきましょう。

カルシウム(Ca)による降圧効果

牛乳と言えば「カルシウム」、カルシウムと言えば「骨」…というほど、代表的な成分ですね。

そんなカルシウムですが、実は血圧とも深い関係があります。

カルシウムが血圧を下げる働きには、主に2つのメカニズムが関係しているので、

詳しく見ていきましょう。

血管の収縮を防ぐ

血圧が上昇する原因にはいくつかありますが、

その中に“血管が収縮することで血液が流れにくくなる”というものがあります。

血管は、神経などから指示を受けると周辺にある“血管平滑筋”という筋肉が収縮して細くなります

このとき、筋細胞の中にカルシウムが入り込むことが必要なのですが、

それならば血管を収縮させないためにはカルシウムは摂らない方がいいように思えますよね?

ところが、カルシウムが不足していると、体内のカルシウム貯蔵庫である骨からカルシウムが供給され、

その一方で腎臓からカルシウムが排出されるのを抑制するホルモンが働くので、

結果的に血液中のカルシウム濃度が高くなってしまうことがわかっているのです。

カルシウムが不足すると、血液中のカルシウム濃度が上昇する

…この一見矛盾した現象を「カルシウム・パラドックス」といいます。

こうなると、筋細胞の中にカルシウムが余計に入り込みやすくなり、

血管が収縮して血圧が上がりやすくなってしまうというわけです。

事実、高血圧患者の中には血中カルシウム濃度の高い人が多い傾向にあることも報告されています。

このため、カルシウムが不足しないように心掛けることも

高血圧を改善するためには必要と考えられています。

ナトリウム排出の促進

カルシウムは骨格を形成するだけでなく、

筋肉の伸縮や細胞内の情報伝達を担うという重要な役目を持っています。

しかし、非常に吸収しにくいミネラルなので、体は無駄な損失を防ぐため、

尿などに排泄されそうになっているカルシウムを再吸収する仕組みがあります。

それが、腎臓での「ナトリウム-カルシウム交換体」におけるカルシウムの再吸収です。

ここではカルシウムを1つ再吸収するのに3個のナトリウムが必要とされるため、

結果的にナトリウムを排出できるというわけです。

 
では、なぜナトリウムの排出が高血圧の改善につながるのでしょう?

ナトリウムは血管など細胞外に多く存在し、

その濃度によって血液などの体液量を調整する重要な働きを持っています。

仮に塩分などを多く摂り過ぎて、血液のナトリウム濃度が高くなったとしましょう。

これは電解質のバランスが崩れた状態になるので、体は血液中のナトリウムを薄めようとして、

体内の水分を血液の中に取り込んでいきます。

しかし、取り込んだ水分の量だけ血液が増えてしまい、血管を内側から圧迫する

…つまり血圧が上がってしまうことになるのです。

ですから、体内の余分なナトリウムを速やかに排出することが

血圧を低下させることにつながるというわけです。

カルシウムの吸収によってナトリウムを排出すると血圧が下がるのは、このためだったんですね。

 
カルシウムの吸収にはホルモンを介したものなどを含め、いくつかのメカニズムがありますが、

カルシウムを積極的に摂取することでも、ナトリウムの排出が促進されるということを知っておきましょう。

また、カルシウム同様にマグネシウム・カリウムなどのミネラルもナトリウムの排出に関係し、

高血圧の改善に役立つことが様々なデータから示唆されています。

国立循環器病研究センターでも、これらの摂取不足が高血圧に関係し、

「多くとることによって血圧は低下する」として積極的な摂取を呼び掛けています

ペプチドによる降圧効果

牛乳には特有のタンパク質(乳タンパク、ミルクプロテイン)が含まれています。

これは子牛にとって消化・吸収しやすい状態になっているので、人でも吸収しやすいタンパク質といえます。

タンパク質は、食べると消化酵素によって分解され、少し小さい分子の「ペプチド」になります。

そして、乳タンパクの1種「カゼイン」のペプチドに、

血管を拡張させて血流を改善し、血圧を下げる効果があることがわかったのです。

 
血圧が上がるメカニズムにはいくつかの系があり、

その1つに「アンジオテンシンⅡ」という物質が関与するものがあります。

アンジオテンシンⅡが作用すると、血管を収縮させるのと同時に、

ナトリウムの再吸収を促進するホルモンの分泌を促して血液量を増加させます。

これらの作用によって、血圧を上昇させてしまうのです。

 
ところが、いくつかのカゼインのペプチドに

アンジオテンシンⅡが合成される過程で働く酵素の働きを阻害する作用が確認されたのです。

酵素が作用できなければアンジオテンシンⅡは作られませんから、

これによる血圧上昇は起こらないというわけですね。

なお、このペプチドを乳酸菌の発酵によって作成し、

トクホ(特定保健用食品)の許可を得た飲料も商品化されています。

旨味成分・ミネラルによる減塩効果

高血圧で病院に行ったほとんどの人が「減塩」を指導されます。

前述の通り、食塩の主成分であるナトリウムが血圧を上昇させてしまう原因となるからですね。

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」でも減塩を推奨し、

高血圧改善を目的とする場合は食塩の摂取量を1日6g未満にするよう呼び掛けています。

 
しかし、ただ単に食塩の使用量を少なくすると、非常に味気ない食事をすることになってしまい、

結果的に減塩生活を長続きさせることができなくなってしまいます

そこで、調理時の工夫として勧められるのが、

酸味や香辛料の活用とともに、旨味やコクをプラスする方法です。

「“だし”をしっかりとると、減塩できる」というのを聞いたことがあるかもしれませんが、

この“だし”を構成しているのがアミノ酸などの旨味やコクの成分で、

人の舌がこれらを感知すると「おいしい」と感じ、満足感が得られるのです。

そして、旨味やコクは牛乳にも含まれています

これらの正体は、カゼインやホエイタンパク質、遊離したペプチドやアミノ酸などのタンパク質のほか、

脂質である遊離脂肪酸やミネラルが持つかすかな苦みが作り出したものです。

食品中にこれらを加えると、含まれている塩分が旨味によって強く感じられたり、

塩分の足りない部分をコクで補ったりと、減塩の物足りなさを感じさせない効果があるのです。

また、牛乳に含まれる乳糖のわずかな甘さが、隠し味となって塩味を引き立たせる効果もあります。

こういった牛乳の減塩効果を利用して、最近では「乳和食」という料理法が提唱され、

詳細は後述しますが、高血圧患者の食事療法に役立てられています。

 

メタボへの効果

メタボリックシンドローム(通称:メタボ)は、

内臓脂肪型肥満に高血糖・高血圧・脂質異常症のうち2つ以上の症状が一度に出ている状態をいいます。

つまり、肥満と高血圧は深い関係にあるわけです。

…となると、「高カロリーの牛乳は控えた方が良いのかも…」と考える人も多いことでしょう。

ところが、2010年、このメタボを予防する効果が牛乳にあると学術発表され、

話題になりました(日本栄養・食糧学会誌)。

これは、日本酪農乳業協会の協力のもと東大・京大をはじめとする専門家をメンバーとして、

8600人を超える大規模調査を行ったデータより導かれた見解です。

研究結果の概要を簡潔に紹介すると、

牛乳や乳製品を多く摂取する人にはメタボが少なく、摂取量とメタボの指標には関連があった

ということです。

つまり、牛乳・乳製品を摂るほどメタボになるリスクが小さくなるわけですね。

おもしろいことに、この相関は女性の方がはっきりと出ていて

最も牛乳を飲まなかったグループの人よりもメタボな人が40%も少なかったというのですから驚きです。

また、血圧だけを見ても、牛乳・乳製品を摂る人ほど血圧が低くなる傾向が明らかになっています。

牛乳には前項で上げたような降圧効果がありますから、

その結果として複合的症状であるメタボの軽減につながっているとみることができるでしょう。

 

牛乳の効果をあげるには…


高血圧の改善に牛乳を用いる最大のメリットは“飲むだけ”という点でしょう。

しかし、ただ飲むだけでなく、さらなる効果を上げる方法もあるのです。

それは「運動」すること

一般社団法人Jミルクによると、週に2回30分ずつ、ウォーキング程度の運動を行っている人のうち、

牛乳や乳製品を摂取するグループでは収縮期血圧が8mmHg下がったということです。

このとき摂取した量は牛乳400㎖相当分ということですから、

毎日コップ2杯の牛乳、もしくはコップ1杯の牛乳+ヨーグルト150g+チーズ1~2切れ程度となります。

通勤や買い物などで30分くらい歩行する時間がある人は、ぜひ牛乳・乳製品の摂取を心掛けて、

効率をあげていきましょう。

 

牛乳が苦手な人は…

牛乳の効果は理解できるけれど、カルシウムやタンパク質なら他の食品から摂ればいいのでは…

という意見もあるでしょう。

確かに、これらのの成分は他の食品から摂ることも可能です。

しかし、牛乳以外に含まれるカルシウムには吸収しにくいものが多く

他のタンパク質を分解して生じるペプチドに牛乳のペプチドと同じような降圧効果があるかはわかりません

ですから、牛乳から摂取する方が効率が良いわけです。

しかも、牛乳を併用すれば減塩することも可能ですから、

高血圧の人にはぜひ利用してもらいたい食材なのです。

発酵食品から摂ろう

そうはいっても、牛乳の味が苦手な人、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしてしまう人などもいます。

特に、後者は牛乳の成分である「乳糖」を分解する酵素を持たない人が多く、

牛乳を飲むのに適さない体質であることが多いのです(乳糖不耐症)。

このような人はヨーグルトやチーズなど発酵した乳製品をから摂るのが適しています

なぜなら、乳酸菌の発酵によって牛乳中の乳糖の多くが分解されているため、

牛乳を飲んだ時よりも乳糖の摂取量が少なくなるので、体に影響が出にくいからです。

もちろん、カルシウムは発酵食品にもそのまま残っていますし、

乳タンパクは分解されてペプチドが産生されていますから、効果が高まる可能性もあります。

また、乳酸菌にはLDL(悪玉)コレステロール、血圧、血糖値などの抑制作用を持つものもいますから、

相乗効果を狙えるかもしれませんね。

ただし、食べやすいからといって摂り過ぎてはいけません

高血圧に有用な成分が多く、メタボになりにくいといっても、高エネルギーの食品であることは事実です。

特に、ヨーグルトは糖分を入れすぎないように気を付けましょう。

料理に混ぜよう

牛乳を料理に使うと食塩の使用量を減らすことができるので、

高血圧の原因となるナトリウムの摂取量を減らせるというメリットがあります。

高血圧患者の減塩目標は1日6g未満と非常に厳しいものですが、

牛乳を利用すればコクと旨味で物足りなさをカバーすることもできますね。

 
具体的に牛乳の料理をあげるとすると、まず思いつくのが“クリームシチュー”や“グラタン”など

ホワイトソース系のものでしょう。

家庭でも定番のメニューなので利用しやすいですね。

しかし、洋食ばかりになってしまうので毎日は…といった面もあります。

そこで紹介したいのが、日本乳業協会が提唱する『乳和食』です。

名前の通り、洋風になりやすい牛乳を和食に上手になじませて、

毎日の食事で牛乳の有効成分を摂りつつ減塩も実行しようというコンセプトのもとに発案されました。

すぐに取り組めそうな方法ばかりですが、1つだけポイントがあります。

それは「成分無調整牛乳」を使うこと。

肥満を気にしている人は低脂肪乳を利用することが多いかもしれませんが、

減塩の物足りなさを隠すためには乳脂肪をしっかり含んだものの方が適しています。

乳脂肪を含むといっても3.5~3.7%のものが大部分ですから、

大量に摂取しなければ問題はないといえるでしょう。

また、気になる牛乳の利用方法ですが、

基本は和食を作るときに使う水の全部または一部を牛乳に置き換えるというシンプルなもの。

どのくらい置き換えるかは個人の好みもありますので、

おいしく食べられる量から始めるのが良いと思います。

牛乳の量が多くなるほど和食のあっさりした感じは少なくなりますが、

減塩の効果は高まりますし、カルシウムやペプチドなどの摂取量は多くなりますよ。

一方で、牛乳と相性が良く置き換えやすいメニューや素材もあります。

実際に作ったときの個人的な意見も交えて、具体例を紹介しましょう。

 

《牛乳・乳製品を和食に取り入れる方法》
メニューや素材調理法など
味噌汁 牛乳(+水)、味噌、だしで作る。
シンプルな具材の味噌汁よりも豚汁などの方が馴染みやすい。
麺つゆ 麺つゆを牛乳(+水)で割る。
すりゴマを多めに入れると馴染みやすい。
茶碗蒸し 牛乳(+水)で作る。
もともと卵のコクがあるので、違和感なく置き換えやすい。
乾物の戻し
(切干大根、ひじき、
干しシイタケ、高野豆腐
など)
牛乳で戻したり、牛乳(+水)で煮たりする(ミルク煮)。
戻すよりも煮る方がより多くの牛乳が摂れる。
密閉容器に乾物とヨーグルト(乾物の重さに対して野菜類3~5倍、海藻類8~10倍が目安)を入れて混ぜ合わせ、8時間ほど冷蔵庫で戻し、少量の調味料で味を調え、そのまま食べる。
ホタテやツナ、すりゴマなどをプラスすると馴染みやすい。
汁気よりもとろみの欲しい調理に便利。

和食に牛乳は意外に感じるかもしれませんが、

今回紹介したものは比較的取り組みやすいので、ぜひ試してみてください。

食材に含まれる旨味成分と牛乳の旨味成分が組み合わさることで、よりおいしくなるものもあり、

味噌や乾物などはその傾向が大きい食材です。

こういった効果は減塩の大きな味方となりますので、上手に利用していきましょう。

また、乳糖不耐症の人も、加熱したり他の食材と一緒に食べたりすることで、

個人差はありますが症状が起こりにくくなるそうですよ。

そのまま飲むだけでなく、毎日の食事でも摂っていきたいですね。

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