高血圧・動脈硬化

血圧を下げる食事のたった3つのポイント

高血圧の治療を受けている人は、まず間違いなく「食生活の改善」を指導されていると思います。

薄い味付けあっさりしたメニューは確かにヘルシーですが、

毎日を彩るはずの食卓が色あせて感じられる人も多いことでしょう。

食生活の改善は重要ですが、無理に行えば長続きせず、高血圧の改善につながりませんね。

ここでは、そんなストレスや物足りなさを軽減しつつ、

血圧を下げられる食事の「3つのポイント」を紹介します。

 

高血圧と食事の関係

なぜ、高血圧だと食生活を改善しなければならないのでしょう?

それは、高血圧になる根本的な原因がすべて解明できておらず、治療する方法がないからです。

通院して薬を飲んでいる人も多いと思いますが、

いずれも血圧を下げる薬(降圧剤)であって、高血圧の治療薬ではありません。

ですから、降圧剤を止めてしまえば、血圧は元通り高くなってしまいます。

しかし、高血圧発症のメカニズムはわからないものの、血圧を上げる要因はいくつか特定されており、

特に注目されているのが「塩分の摂り過ぎ」と「食べ過ぎ(肥満)」です。

どちらも食事に左右されますね。

このため、根本治療がない高血圧を改善するには食生活の見直しが不可欠なのです。

では、なぜこの2つが高血圧を悪化させるのか、見ていきましょう。

塩分の摂り過ぎ

塩分…特に食塩に多く含まれるナトリウムは血液の量に関係しています。

ナトリウムは血管と各組織での物質のやり取りに関係しているため、血液中の濃度は一定に保たれています。

ところが、食事をするとその中のナトリウムが体に摂り込まれ、血液中の濃度が上昇してしまいますね。

すると、濃くなった分のナトリウムを薄めようとして、血液中に水分が取り込まれていきます。

その結果、ナトリウム濃度は元に戻りますが、

薄めるために必要とされた水分の量だけ血液が増えたことになります。

でも、血液が満たされている血管の長さも太さも変わりませんから、

血管の中はいつもより多い血液のためにパンパンになります。

ところで、血管には心臓から押し出された血液の勢いが圧力となって、内側の壁にかかっています。

これが「血圧」です。

しかし、血液の量が増えると心臓の拍動による力だけでなく、

量の増加による圧力も血管壁に加わることになります。

そのため、塩分を摂ると血圧が上昇してしまうのです。

 
ただし、ナトリウムによる血圧上昇は、

ナトリウムが腎臓で尿として排出されるまでの一時的な人(食塩非感受性高血圧)と、

摂取したナトリウムが排出されにくいために高血圧が持続する人(食塩感受性高血圧)がいます。

減塩による血圧改善効果は食塩感受性の人の方が出やすいのですが、

もともと高血圧である以上、一時的にせよ食塩を摂取して血圧が上がるのは避けるべきですので、

非感受性の人もできるだけ減塩を心掛けた方が良いでしょう。

食べ過ぎ(肥満)

生物の体には余った栄養分を体に蓄えておき、いざという時に利用できるように備えるシステムがあります。

人の場合は「体脂肪」がこれに該当するわけですが、

体脂肪が蓄積するということは、栄養分(特にブドウ糖)が余っているということです。

そして、この過剰なブドウ糖が高血圧に悪影響をもたらす大きな要因となることが、

様々な研究からわかっています。

特に次の3点は肥満による血圧への悪影響として、注目されています。

【肥満の影響】

  • 体積と血液の増加によって血圧が上がる
  • レプチンの分泌によって血圧が上がる
  • インスリンの分泌により血圧が上がる

それでは、これらのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

体積と血液の増加によって血圧が上がる

体重が増えるということは「体積」が増えることにもなりますね。

すると、血液を全身に行きわたらせるため、

標準的な体重のときよりも心臓は高い圧力をかけて血液を送り出します

つまり、血圧を高める必要があるわけですね。

さらに、体積の増加に伴って血管も延長し、これを満たす血液の量も多く必要になります。

たくさんの血液を絶え間なく送り続けるため、心臓は余計に働かなくてはなりません。

これによっても血圧が上昇しやすくなるのです。

レプチンの分泌によって血圧が上がる

前項で“体積が増える”と述べましたが、この増加する部分の多くは体脂肪によるものですね。

体脂肪は「脂肪細胞」により構成されていますが、

ここから「レプチンというペプチドホルモンが分泌されています。

レプチンの働きは、本来“肥満の抑制”や“体重の制限”をすることにありますが、

大量の脂肪細胞から大量のレプチンが分泌され続けている肥満者の多くでは、

レプチンに対する感受性が低くなっている可能性(レプチン抵抗性)が指摘されており、

過食に陥ると考えられています。

脂肪細胞が肥満を促進し、さらに過剰なレプチンの分泌を引き起こしてしまうわけです。

そして、このレプチンには交感神経を刺激して血管を収縮させる働きがあることがわかっています。

血管収縮によって血液が流れにくくなれば血管壁にかかる圧力が増し、血圧が上がることになるのです。

インスリンの分泌により血圧が上がる

肥満の人は食べ過ぎてしまうため、血液中には栄養素であるブドウ糖が余った状態になっています。

生物には余ったブ栄養素を万が一に備えて体に蓄えておこうという防御システムが備わっていますので、

「インスリン」、というホルモンを分泌させてブドウ糖を中性脂肪に変え、体に蓄えようとします。

これが体脂肪になるわけですね。

ところが、肥満の人は常にブドウ糖が過剰な状態なので、

インスリンが追い付かず、どんどん分泌されていきます。

こうなると体が高濃度のインスリンに慣れてしまい、

感受性が低くなってしまうのです(インスリン抵抗性)。

そのため、インスリンが不足していると判断した脳は

もっと多くのインスリン分泌を働きかけるという悪循環が起こるのです。

ところが、インスリンにはブドウ糖を蓄える作用だけでなく、

腎臓に働きかけて尿にナトリウムを排出しないようにしたり、

交感神経を刺激して心拍数を上げつつ末梢血管での血行を低下させたりといった働きもあります。

前述の通り、ナトリウムは血管内に水分を引き留め、血液量を増やすことで血圧を上昇させますし、

心拍数の増加と血行の低下は血管にかかる圧力を上げることになりますね。

そのため、肥満の人はインスリンの過剰分泌によって血圧が上がりやすくなってしまうのです。

 

食生活改善の3つのポイントを知ろう

このように、高血圧になる要因には「塩分の摂り過ぎ」や「肥満の原因となる食事」と

深い関りを持っていることがお分かり頂けたと思います。

以上を踏まえて考えれば、

血圧を下げるには「しょっぱい食事」と「過食」に注意すればよいことは明らかですね。

…とは言っても、これを長期にわたって実行していかなければならないというのは少々辛い、

というのが本音でしょう。

でも、ポイントを押さえて「食生活の改善」を実行すれば、

過度な食事制限はしなくても血圧を下げることは不可能ではありません

前述の血圧上昇のメカニズムを理解した上で、ぜひ実践してみてください。

カロリーオーバーと栄養素に気をつける

まずは高血圧の大敵“肥満”を防止しましょう。

国立循環器病研究センターによると、標準体重まで減らさなくても血圧を下げる効果はあり、

1㎏の減量で血圧は1~1.5mmHg下がるそうです。

高血圧による脳出血・心疾患などの合併症リスクは血圧と共に上がりますから、

ダイエットによって少しでも下げることには大きな意義があります。

 
まず、肥満であるということは消費カロリーを摂取カロリーが上回っているということですから、

運動などで消費量を増やさないのであれば、摂取量を減らすことでコントロールしましょう。

それでは、自分の体格にあった“適切な摂取カロリー”とはどのくらいでしょうか

実は、身長から標準体重を計算し、それに「活動区分による数値(下表)」をかけることで

求められるんです。

【適切な摂取カロリーの求め方】
 
身長(m)×身長×(m)×22 = 標準体重
標準体重×活動区分による消費エネルギー値 = 適切な摂取カロリー

《活動区分による数値》
区分活動の内容数値
軽い仕事主にデスクワークをする人、主婦25~30
中程度の仕事
立ち仕事や外回りが多い職業
30~35
重い仕事力仕事の多い職業35~40

例えば、身長160㎝の専業主婦ですと、

160㎝=1.6m
専業主婦の“活動区分による数値” = 下限25、上限30

ですから、計算すると

標準体重 = 1.6(m)×1.6(m)×22 = 56.3(㎏)
適切な摂取カロリー  下限 = 56.3(㎏)× 25 = 1408 kcal 
           上限 = 56.3(kg)× 30 = 1689 kcal

となるので、1日あたり1408~1689kcalが適当であるということになります。

「少ない!」「あっさりしたものしか食べられない!」と感じるかもしれませんね。

でも、「摂取カロリーを抑える」ことは、必ずしも「油っこいものや空腹を我慢する」ことではありません

カロリー量と比べて、体脂肪に変わる量、代謝にかかる時間、満腹度はイコールではないからです。

例えば、同じ600kcalの食事を摂るとき、野菜中心の低カロリーのものならたっぷり食べられますが、

ピザなどの油っこい料理では量が足りず、腹八分目にしかならないかもしれません。

物足りないからと言ってサイドメニューを追加したりデザートを頼んだりしたら

摂取カロリーをオーバーしてしまいますね。

こんなとき、物足りなさを感じても試しにそのまま食事を終えてみてください。

油っこい食事は消化に時間がかかる分、すぐに満腹感を得ることはできませんが、

とても腹持ちが良いので、間食を減らすことができます

また、油分には“体脂肪”に変わりやすい糖質の吸収を阻害する働きがあるともいわれています。

油っこい料理も、摂り方次第でダイエットの味方にすることができるのです。

 
逆に、体脂肪に変化しやすい糖質の量には注意しましょう。

糖質は主食のご飯やパン・麺類や甘い物、スナック菓子など炭水化物を多く含む食品に含まれます。

これを摂り過ぎると、消化によって前述のブドウ糖が多く作られ、体脂肪・血圧上昇の原因になります。

糖質を控えることはとても重要ですので、必ず実践しましょう。

魚と野菜を多く摂る

主食を減らすと物足りないですし、糖質たっぷりのデザートも控えるとなると、

食事の満腹感を得るのが難しいと思うかもしれません。

でも、満腹になってはいけないわけではありません

「糖質でお腹いっぱいにすること」がNGなのです。

ですから、糖質を減らした分は、

脂身の少ない鶏肉や魚、大豆などの豆類のタンパク質でしっかり補いましょう

特に魚(ニシン、サバ、サケ、イワシ)はおすすめの食材です。

お肉に比べてカロリーが低いので多く食べられますし、

血液をサラサラにするDHAやEPAがたくさん含まれていますので

血圧を低下させる作用もあります。

 
そして、インスリンの分泌を抑える食物繊維も一緒にたっぷり摂るようにしてください。

生野菜も良いですが、温野菜の方が量がたくさん摂れるのでおすすめです。

ただし、生野菜にはナトリウムの排出を促進するカリウムが豊富に含まれています。

塩分を摂り過ぎたときには生野菜を組み合わせるのも効果的です。

これらはカロリーも低いので、意外とお腹いっぱいになりますよ。

なお、エゴマ油・アマニ油などにはα-リノレン酸が含まれていて、これは体内でEPAに変換されますから、

調理やドレッシングに利用するのも良いでしょう。

加工食品を減らす

実は、この「加工食品を減らすこと」が一番難しいかもしれません。

加工食品とは“食品(食材)になんらかの加工を施したもの”であり、例えば、

水産練製品(ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ)、肉加工品(ハム、ソーセージ、ベーコン)、

インスタント食品、菓子類、マーガリンなどが該当します。

日常的に口にするものや、調理の手間を省く主婦の味方も多く見られますね。

しかし、加工食品は高血圧の原因となる「塩分」「糖質」「脂質(飽和脂肪酸)」の

いずれか(またはすべて)を大量に含んでいるといっても過言ではありません。

例えば、練製品・肉加工品などは塩分、マーガリンは飽和脂肪酸、

菓子類(クッキーやチョコレート)は糖質・飽和脂肪酸、

インスタント食品・菓子類(スナック菓子)などは塩分・糖質・飽和脂肪酸が大量に含まれています。

塩分や糖質の影響は既に触れた通りですが、

飽和脂肪酸は血管を細く硬くする動脈硬化」を進行させ、高血圧を招く要因になる物質です。

外食や忙しいときは仕方ありませんが、料理するときは意識してこれらの使用を控えましょう。

 

食生活の改善を長く続けるには

食事が血圧を下げるのに重要な要素であることは、様々な研究から明らかです。

まして、高血圧の治療法が確立されていない以上、

食事による影響をできるだけ下げるように努力することは、

命に関わる合併症に発展させないためにも必要なことですね。

しかし、これは長期戦でもあります。

厳しい食事制限をすれば降圧効果は早く現れますが、やがてストレスを招き、続けるのが難しくなります。

そのためには毎日の食事すべてを制限するのではなく、

1日単位や1週間単位で調整するようにすることも長続きさせる秘訣です。

例えば、

  • 外食が続いていた ⇒ 今日と明日はカロリーを控えよう
  • お昼にラーメンが食べたい⇒ 食物繊維たっぷりのワカメラーメンにしよう
  • どうしてもケーキが食べたい ⇒ 食事の時のご飯は食べないようにしよう
  • 忙しいから今日は加工食品を使おう ⇒ おやつはスナック菓子でなく、焼き芋にしよう

のように、自分が何を食べ、何を摂り過ぎたのか考えて、どこかでバランスをとることです。

自分の食欲を満たしつつ、きちんとポイントを押さえて制限していく

この点に気をつければ、高血圧としっかり向き合って改善していくことができますよ。

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