高血圧・動脈硬化

運動で高血圧を改善する効果的な方法

高血圧の治療には、「降圧剤」などと併せて

「生活習慣(食事・運動など)の改善」を行う方法しかありません

このうち、「食事」は忘れずに摂るので改善しやすいのですが、

自主的に行わなければならない「運動」は、まず実行するのに難しい面があります

でも、運動には高血圧を改善する優れた効果があるのです。

ここでは、改善できる理由をわかりやすく解説した上で、効果的な運動法を紹介しています。

 

高血圧を改善できる理由

残念ながら、「この治療を受ければ高血圧が治る」という方法は、今のところありません

…というのも、肥満・塩分・ストレスなど血圧上昇に関わる要因はいくつか特定されているものの、

それらが複雑に絡み合っているため、治療法を確立できないのです。

しかし、根本的な治療法はありませんが、

「どうすれば血圧を下げられるか」といった方法については研究がさかんに行われています。

その1つが「運動」です。

運動が習慣化している人ほど高血圧を起こしにくい傾向があることや、

運動によって血圧を下げられることが、各国の研究者によって明かにされています。

このメカニズムも非常に複雑ですが、運動によって血圧が下がる仕組みのいくつかが解明されているので、

主だったものを紹介していきましょう。

血管と血液の改善

運動をすると心拍数が上がり、それによって血液循環が改善することはよく知られていますね。

他に、血液をサラサラにして流れやすくする効果もあります。

血液中のLDLコレステロールや脂質の量が多いと血液がドロドロになり、

血流が悪くなるので血圧が上昇する要因になってしまうのですが、

運動することによってこれらを消費し、サラサラの状態に戻してくれるというわけです。

 
さらに、東京大学大学院医学系研究科の安東准教授によると、

血液循環を改善すると血管が柔らかくなることもわかっているそうです。

もともと、血液の中には、出血した時に血を固まらせる(かさぶたを作る)“血小板”が存在しています。

もし、これが血管の中で起こってしまうと血管が硬くなり、

さらに他の物質も詰まりやすくなってしまいます。

ところが、血液がスムーズに血管内を流れるようになると、これが刺激となって血管の内皮細胞に伝わり、

血管の細胞が活性化され、機能が活発になっていきます

そして、この内皮細胞には

血小板を固まりにくくする作用を持つ“一酸化炭素”や“プロスタサイクリン”といった物質を産生し、

血管を保護する機能があるのです。

運動によって内皮細胞が活性化すると、

血小板を付着しにくくして血管の柔軟性を保つ効果があるわけですね。

血管が柔らかいと拡張しやすく、血液が流れやすくなる(血管抵抗性が減少する)ので、

血圧を低くすることができるのです。

 
もちろん、運動をすれば筋肉と共に血管も伸び縮みをすることになるので、

血管のストレッチを行っている状態になります。

これによっても血管を丈夫でしなやかにすることができ、動脈硬化が改善する作用が確認されています。

ただし、東洋大学による研究(Yamato Y, 2017)では、

ストレッチによる効果は行った部位のみに作用することが明らかになったそうです。

全身の動脈硬化の改善を効果的に行うには、満遍なくストレッチをすることが望ましいということですね。

血管の健康が維持できると動脈硬化を抑制する効果もあるので、

血圧の上昇だけでなく、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患の予防にもつながりますよ。

ホルモンの分泌と交感神経の活動低下

血圧は様々なホルモンや自律神経(交感神経・副交感神経)によって調節されていますが、

“運動”という刺激がこれらに影響を与えることで、高血圧の改善につながるものもあります。

例えば、運動によって心臓からは「HANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)」というホルモンが

分泌されることがわかっています。

これにはナトリウムの排泄を促して体液(血液)の量を減らすことで、

血管内に加わる圧力を下げたり、血管を拡張させたりして、血圧を下げる作用があるのです。

おもしろいことに、HANPは運動を始めた早い時期に、

非常に軽い運動でも分泌されることが確認されています。

このような利尿作用を持つ薬は、実際に血圧を下げる薬(降圧剤)として利用されているので、

運動をすれば降圧剤を飲むのと同じ効果が得られるということになりますね。

ただし、激しい運動をすると反対の作用を示す「抗利尿ホルモン」が分泌されることもわかっているので、

注意してください。

 
また、運動を長期間続けていくと、

交感神経の活動が抑えられることで末梢血管の抵抗性が弱まることがわかっています。

交感神経とは無意識のうちに体の調節を行う自律神経の1つで、主に活動時に作用し、

体が活発に動きやすいように呼吸を速めて酸素を多く取り込んだり、

心臓の拍動を速めて全身への血液供給を促したりしているわけです。

反対に、睡眠中などリラックスしているときには副交感神経が中心となって働き、

臓器などが休息できるように代謝を抑えています。

 
そして、この交感神経は緊張している時にも活性化します。

緊張すると、汗をかいたり鼓動が早くなったりした経験は、誰もが持っていることでしょう。

実はこのとき、手足などの末梢血管の収縮も起こっています。

もしかしたら、冷えを感じたことがある人もいるかもしれませんね。

このような緊張は、現代人に多いストレスでも起こります。

ストレスによる緊張が末梢血管の収縮は血液の循環を悪くさせ、

血圧を上げてしまうことになるのです。

ところが、運動によって交感神経の活動を抑制でき、

末梢での血液循環を改善する効果があることがわかっています。

ただし、運動を継続して行うことが必要ですので、できるだけ習慣化して行うようにしましょう。

肥満の解消による降圧効果

国民栄養調査によると、

高血圧の人は肥満の傾向が高く、肥満の人は運動習慣ある割合が少ない」というデータが得られています。

肥満は余ったエネルギーが蓄積された結果ですから、

活動量の少なさ(=運動不足)が原因の1つであることは明らかですね。

そして、肥満の人は正常な体重の人と比べて約2~3倍多く高血圧症にかかると言われています。

このことからも高血圧と肥満・運動不足の因果関係は見て取れますが、

医学的にも肥満であることは高血圧を発症させる要因になっていることがわかっています。

 
では、なぜ肥満だと高血圧になるのでしょう?

肥満の人は血液中に余分なブドウ糖(血糖)が多く存在しているため、血糖値が常に高くなっています。

通常は、この血糖値を下げるため、「インスリン」というホルモンが分泌され、

ブドウ糖はグリコーゲンという物質に変換されて貯蔵されるのですが、

肥満だと常にインスリンが分泌されている状態になっています。

ところが、このインスリンには

  • 腎臓でナトリウムの再吸収を促進する作用
  • 交感神経を刺激して「カテコールアミン」を放出させる作用

があります。

前者はナトリウムを過剰に血液中に存在させることになるため、血液中に水分を呼び寄せることとなり、

その結果、増加した血液によって血圧を上昇させてしまいます。

また、後者には末梢血管を収縮させる作用があるため、

血液が流れにくくなることで血圧を上げることにつながってしまうのです。

さらに、脂肪細胞から分泌される「レプチン」という物質には、

交感神経を刺激して血圧を上げる作用が認められているのですが、

肥満の人は脂肪細胞が多いため、この分泌量も多いことがわかっており、

より血圧を上昇させる要因となっています。

 
これを改善するのに有効なのが「運動」です。

運動することによって、過剰なブドウ糖を消費して血糖値を下げることができますし、

脂肪を燃やして脂肪細胞を減少させることができるからです。

インスリンやレプチンの分泌を少なくすることができれば、血圧も上がりにくくなるというわけです。

同時に、脂肪が減少すれば身体の体積を減らすことができます。

体積が小さければ、心臓は強く拍動しなくても全身に血液を送り届けることができるので、

血圧を高める必要もなくなります。

 

効果的な運動法とは?

運動は様々な観点から高血圧の改善に効果的です。

ここでは実際に運動を始めるにあたって、

効果的な種類や方法必要な時間や強度の目安について紹介していきましょう。

ただし、強度の項で触れるように、高血圧の改善に適した運動の量や強さには個人差があります。

また、高血圧の症状の程度や、他の病気にも関わってきますので、

通院中の人は医師に相談の上、運動に取り組むようにしてください。

運動の種類と方法

それでは、高血圧の改善をもたらす運動とは、どのようなものでしょうか?

前項でも触れましたが、実は軽い運動の方が高血圧改善には適しているということが、

様々な研究やデータから明らかにされています。

ここで言う“軽めの運動”とは、酸素を消費して行う「有酸素運動」が中心となるもので、

厚生労働省“e-ヘルスネット”によると、有酸素運動を続けることで

高血圧患者の収縮期血圧を7.4mmHg、拡張期血圧を5.8mmHg低下させる効果があるとして、

次の運動法を推奨しています。

 

《効果的な運動(有酸素運動)と時間の例》
運動の種類目標時間
・ウォーキング(速歩)
・軽いジョギング
・水中運動
・自転車
・レクリエーションスポーツ
などの有酸素運動
1週間にほぼ毎日、30分以上の運動。
(10分以上の運動ならば、連続していなくても1日合計30分以上ならOK)

運動するとなると、「果たして時間がつくれるだろうか」という心配がつきものですが、最近では

1週間あたりの「総運動時間」または「総消費カロリー」

のどちらでも同じような降圧効果が得られることがわかっています。

どういうことかというと、例えば毎日30分の運動時間がとれなくても、

1日おきに1時間の運動ができれば、回数は少なくなりますが、

どちらも1週間で3時間半以上の運動時間がとれたことになりますね。

あるいは、速足でのウォーキングはきついので、ゆっくり歩く代わりに1日1時間歩くことにして、

総消費カロリーを同じに設定してもOKということです。

もちろん、これらを組み合わせてもいいですし、

表にあるように10分以上なら細切れの運動でも効果があるということですから、

自分のライフスタイルに合った運動法と運動時間で実践していけば良いでしょう。

強度について

運動を始めようと思ったとき、わかりにくいものに「運動の強度」があります。

強度とは、その運動によって生じる体への負荷ですが、これは一人ひとりに違いがあります。

例えば、運動習慣がある人は筋力も心肺能力も備わっているので、

ゆっくり歩いただけでは負荷が少なすぎるため、相当な時間と距離を歩かなければなりません。

反対に、運動不足な人は階段を上がっただけで息が切れてしまいますね。

ですから、前項の表にあるような運動を同じように行っても、

人によって運動の負荷は異なってしまうことになります。

そこで、目安にしたいのが「心拍数」です。これは「一分間の脈拍数」と同じです。

適切な心拍数としては100~120拍/分が推奨されていますが、年齢や体力によって個人差もあります。

次の計算式によってこれらを加味した運動時の目標心拍数がわかるので、計算してみると良いでしょう。

【カルボーネン法】

目標心拍数=(220-年齢-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数

※安静時心拍数は5分間椅子に座ってから測定したものをいいます。

【運動強度】 

〇高齢者:40%(0.4)
◯中高年:50〜60%(0.5〜0.6)
◯若者 :50〜70%(0.5〜0.7)

例)45歳、安静時心拍数80、体力がないので運動強度は50%とすると、
  目標心拍数 =(220 - 45 -80)×0.5 + 80 = 127.5
  心拍数(脈拍数)128を維持できる強さの運動をすればよい。

このような運動療法を10週間行ったところ、公益財団法人長寿科学振興財団のデータでは、

約半数の軽症~中等症高血圧患者に収縮期血圧20 mmHgおよび拡張期血圧10 mmHg以上の

血圧低下がみられたということです。

この効果は非常に大きいですね。

心拍数は具体的な数値として運動強度を判定できるので、

運動中に脈を数えて運動のスピードを調整しながら行うと良いでしょう。

もし、心拍数のカウントが面倒であれば、腕時計と一体型のウェアラブル心拍計も販売されていますので、

利用すれば手軽に把握することもできます。

また、心拍数を把握しなくても、

目安として「会話に支障がない程度のギリギリのペース」を保って運動すると、

だいたい目標とする心拍数を維持できるといわれています。

 
ただし、降圧剤としてβ遮断薬を服用している人は運動による脈拍数の増え方が小さいので、

脈拍数は運動強度の指標になりません

運動に取り組む際には主治医に相談してみましょう。

日常の行動を「運動」に

運動に高血圧を改善する効果があることはわかっていても、

忙しい現代人にはその時間をひねり出すのさえ難しいことです。

歩く機会はあっても、それは目的地までの手段であって、

常時より心拍数を上げることはできますが、「運動」と呼ぶには程遠いかもしれません。

それならば、ただの“歩き”を運動としての“ウォーキング”に変えてしまいましょう

そのためにはいくつかのポイントを踏まえて歩くことが必要です。

アサヒ飲料㈱では次のような方法を紹介しています。

【“歩き”を“ウォーキング”に変える方法】

  • 上半身、足、股関節のストレッチをしてウォーミングアップをする。
  • 膝を伸ばしてかかとから着地する。
  • 歩幅は徐々に広くなるようにする。
  • 前に出した足のかかとが着地して体重移動がはじまったら、足の裏で地面をつかむようなイメージで、重心をかかとからつま先へ移動する。
  • 視線は周りの景色が見えるように少し遠くに。
  • あごを引き、胸を張り、背筋を伸ばす。
  • 肩の力を抜いて、リラックスして腕を振る。

以上の点に注意して、日常の活動にちょっとした工夫をこらし、

運動に変えてしまえば習慣化しやすくなりますね。

身の回りのことから是非取り組んでみてください。

関連記事

  1. 高血圧・動脈硬化

    上がる?下がる?高血圧の人の正しいお風呂とは

    ありふれた日常生活の中にも高血圧の人にとって危険な行為が潜んで…

  2. 高血圧・動脈硬化

    高血圧がむくみの原因になる?改善方法について

    女性なら、起床時や夕方などにむくみやすいという人は珍しくないか…

  3. 高血圧・動脈硬化

    カルシウム不足が高血圧を招く理由

    「カルシウム」は不足すると更年期以降の女性に多い「骨粗しょう症…

  4. 高血圧・動脈硬化

    高血圧と血糖値の深い関係とは?改善するには

    血糖値が高いと「糖尿病」になるということは、広く知られています…

  5. 高血圧・動脈硬化

    息切れは高血圧悪化のサインかも?

    階段、坂道、長めの歩行…今まで問題なかったのに、息苦しさを感じ…

  6. 高血圧・動脈硬化

    〝しびれ”は危険のサイン 高血圧がもたらす合併症について

    高血圧は自覚症状に乏しいものの、命に関わる合併症が多いため「サ…

高血圧の記事一覧

最近の記事

  1. 更年期障害

    更年期障害はプラセンタ注射で改善する!
  2. 高血圧・動脈硬化

    高血圧と血糖値の深い関係とは?改善するには
  3. 更年期障害

    市販薬を利用した更年期障害との向き合い方
  4. 老眼

    こんなときに”見えない”なら、老眼の可能性あり!
  5. 老眼

    老眼鏡を忘れたときの対処法
PAGE TOP