高血圧・動脈硬化

高血圧の予防・改善はカリウムで!

高血圧になると必ずと言っていいほど医師から勧められる「減塩」。

食塩が高血圧の原因になるからですね。

しかし、この食塩の影響を少なくしてくれる物質があります。

それが「カリウム」です。

ここでは「カリウム」が高血圧を予防するメカニズムを中心に、

効果的な摂取方法注意点についてわかりやすく説明しています。

 

カリウム(K)とは?

カリウムは私たちの生命活動に欠かせないミネラルの一つです。

体内では「体液」の中にイオンの状態で存在していますが、

その9割が細胞の中を満たす体液(細胞内液)に存在し、

細胞の外…つまり血液や細胞同士の隙間(細胞外液)には1割程度しかありません。

細胞の中に偏って分布していることがわかりますね。

これは、カリウムの“ブラザー・イオン”と呼ばれる「ナトリウム」との働きに、深く関係しています。

カリウムとナトリウムの関係

カリウムの体内での分布と対照的に、ナトリウムは細胞内液には1割ほどしかなく、

細胞外液に9割が存在しているのです。

この両者の分布の違いが大きな意味を持っているので、この点について少し触れておきましょう。

 
体は健康な状態を保つために、ほぼ一定の条件を常に保つように機能していて、

これを「恒常性の維持」といいます。

例えば、運動して体温が上がると、自動的に発汗して放熱しますし、

寒くなれば血管が収縮して体表から熱が奪われないようにするのと同時に、

体を震わせて熱を生み出そうしますね。

このように、“体温を維持する”という一つの目的に対して、

“高温になれば放熱”“低温になれば放熱防止・熱の産生”のような相反する作用を「拮抗性」と言います。

そして、「カリウム」と「ナトリウム」は体液の恒常性に対して拮抗する作用を持っているのです。

浸透圧の調整

体液には、血液や細胞の間を流れて細胞の中に必要な物質を届け、

不要な物質を運び出すという働きがあります。

このとき、細胞に好き勝手に物質が出入りしてしまうと困るので、細胞は“半透性”の膜で覆われていて、

水のような小さい物質だけが浸透圧に応じて通れるようになっています。

この「浸透圧」というのは、濃度の異なる物質が半透膜を隔てて存在しているとき、

濃い方が薄まろうとして、薄い側の水分を取り込もうとする力です。

つまり、半透膜を介して内側にカリウム・外側にナトリウムが多く分布することで、

浸透圧が釣り合っていれば、水分の移動は起こらないということです。

カリウムとナトリウムが適切なバランスで存在することが、体液の量と質を維持するのに必要なわけですね。

 

カリウムが高血圧の予防・改善に良い理由

では、なぜカリウムの存在が高血圧を予防・改善することにつながるのでしょう?

私たちが食事から摂った塩分には「ナトリウム」が多く含まれています

適正な量ならナトリウムは体液の浸透圧調整に使われ、適正な血圧を維持することができるわけですが、

塩分の多い食事を摂ると体内のナトリウムの濃度が高くなってしまいますね。

すると、本来であれば細胞の中には少ししか存在しないナトリウムが、

大量に入り込んでしまうようになります。

これは浸透圧のバランスが崩れた状態なので、濃度の高い細胞の中を薄めるために水分が取り込まれ、

細胞はパンパンに膨らんでしまいます。

これが血管を構成する細胞でも起こるため、血管の壁が厚くなり、血管は細くなる

…つまり、血圧が上昇するわけです。

しかし、ここにカリウムがあると、細胞の膜に存在する「ナトリウム-カリウムポンプ」が働いて、

細胞の中に入り込んだナトリウムをくみ出し、代わりにカリウムを取り込むことができます

このとき、ナトリウム3個に対してカリウム2個が必要です。

このポンプ機能によって、細胞の外や血液中にナトリウムが多い状態に戻せるわけです。

ただし、このときのナトリウム量が多すぎると細胞内から水分を呼び込んでしまい、

血液の量が多くなって、血管内の圧力が高まり血圧が上昇してしまいます。

そこで、血液量を増えたことを「腎臓」が察知すると、

腎臓のナトリウム-カリウムポンプが機能して原尿中(作っている途中の尿)のカリウムを取り込み、

ナトリウムを汲み出していきます。

すると、薄めるのに必要だった水分も不要になるため排出され、

血液の量が減少するので血圧を下げられるのです。

カリウムの存在によって、体外に排出できるナトリウムの量が増え、水分も減らせるわけですね。

 

カリウムを多く含む食品

カリウムは決して摂取が難しい栄養素ではありません。

それなのに、なぜ高血圧の発症につながるような“バランスの崩れ”が生じてしまうのでしょうか?

カリウムが不足する理由

実は、私たちの体は「ナトリウムを溜めこみ、カリウムを排出しやすい」というシステムになっています。

人類がまだ原始的な生活を送っていたころは、

動・植物をそのまま、あるいは火を通しただけの状態で食べていました。

この食生活ですとカリウムは調理による損失がないために多く摂取できる(後述)のですが、

ナトリウムは不足しやすい栄養状態になります。

ですから、貴重なナトリウムを排出せず、

過剰になりやすいカリウムは溜めこまないような体のつくりに進化していったのです。

なんと、腎臓でのカリウムの排出量は約90%もあるんですよ。

 
ところが、文明の発展と共に食生活も豊かになり、“味付け”と“調理”という文化が生まれました。

これによって、私たちは大量のナトリウムを塩分として摂取し、

調理によってカリウムを減少させてしまうようになったのです。

ところが、体の方は太古のまま、変化していません。

そのため、摂取するナトリウム量に対してカリウム量が不足するという

アンバランスな状態に陥りやすくなり、高血圧の原因になってしまうというわけなのです。

ある報告によると、私たちが摂取する塩分のうち、食材そのものに由来するのはわずか12%で、

加工食品を含め人為的に添加した塩分が80%を占めているといいます。

現代人がいかに塩分、つまりナトリウムを摂り過ぎているか、よくわかりますね。

カリウムを含む食品

カリウムは通常の食生活を送っていれば不足することはありませんが、

ナトリウムを摂り過ぎている人は、それに見合う量のカリウムを摂ることが大切です。

なぜなら、ナトリウムの排出に欠かせない「ナトリウム-カリウムポンプ」には、

ナトリウム3個に対してカリウム2個が必要だからです。

現代人の食生活を考慮すると、カリウムを多く含む食品を選択的に食べることも重要になってきますね。

一般的に、カリウムを多く含むグループとしては、

野菜や果物、豆・種子、きのこ類、海藻など植物性の食品が挙げられます。

また、肉や魚などの動物性食品にも比較的多く含まれています。

 

《カリウムを多く含む食品の例》
食品群食品 カリウムは多いが
注意したい食品
野菜類 切干大根(乾燥)、パセリ、あしたば、
ニンニク、モロヘイヤ、しそ、枝豆、
ホウレン草、レタス、カボチャなど
果物類干しぶどう、アボカド、干し柿、
プルーン(乾燥)、バナナ、メロン、
キウイなど
豆類・種子類 大豆製品(大豆、きなこ、納豆)、
銀杏、栗、ゴマ、えんどう豆、いんげん豆など
ピスタチオ、ピーナッツ、アーモンド、
カシューナッツ、クルミなど
きのこ類 干しシイタケ、きくらげ(乾燥)、
エリンギ、マツタケ、シメジ、
えのきたけ、マイタケなど
海藻類 こんぶ(乾)、わかめ、とろろこんぶ、
ひじき(乾)、あおさ、海苔など
左記を加工したもの
(佃煮、味付け海苔など)
魚介類 ほや、車えび、ほたて、みる貝、
伊勢えび、大正えび、
うに、たらこ、いか(焼)、
ばいがい、甘えびなど
するめ、えび・イカ類、
佃煮(えび、いかなご・わかさぎ・
かつお節、はまぐり)など
肉類 鶏ささみ、豚ひれ肉、かも、牛ひれ肉、
鶏むね肉、鶏レバー、牛肩肉など
ビーフジャーキー、生ハム、サラミ、豚もも肉など
魚類 煮干し、かつおぶし、あゆ(焼)、鯛、
あじ、さわら、いわし、かじき、かつお、
身欠きにしん、ひらめ、ふぐ、むつ、
さけ、いかなご、かわはぎ、ぶり、
まぐろ(赤身)、すずき、にじますなど
左記を加工したもの
(干物など)

表の食品には、佃煮や干物のように加工されたものも含まれています。

こういった食品はカリウムだけでなく、ナトリウムも大量に摂ってしまうことになるので、

食べ過ぎには注意しましょう。

また、種子や脂質を多く含む肉類はカロリーが高いので気を付けてください。

果物はカリウムの摂取にお手軽な食材ですが、大量に含まれる“果糖”は体脂肪に変化しやすいため、

肥満傾向や糖尿病を患っている人には適しません。

同様にコレステロールを多く含むエビ・イカ類は、

動脈硬化の原因になりやすいことを忘れないようにしましょう。

いずれも「食べてはいけない」のではなく、

「頻繁に食べない」「少量にする」など気を配ることが大切な食材です。

野菜・豆類・きのこ類のように、高血圧症の人に影響の少ない食材を中心に摂るように心掛けましょう。

ただし、カリウムの摂取にあたっては他にも注意すべき点があります。次項も併せてご覧ください。

 
なお、最近では減塩タイプの調味料が多く販売されています。

これらの多くは食塩(塩化ナトリウム)を塩化カリウムに置き換えたものなので、

調味料からもカリウムを摂取することができます。

もちろん、置き換えていない分はナトリウムなので摂り過ぎは厳禁ですが、

ナトリウムの摂取量を減らすのと同時にカリウムの摂取ができるという点ではおすすめですよ。

 

上手な摂り方

カリウムを多く含む食材を用いても、調理の方法によってはカリウムが摂れないことがあります。

また、誰でもたくさん摂れば良いというわけでもありません。

ここでは、カリウムを上手に摂るための注意点をまとめてみました。

カリウムの摂取目安量

まず、カリウムをどれくらい摂れば良いのか知っておきましょう。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、

成人の1日あたりのカリウムの目安量は男性2500㎎、女性2000㎎となっています。

しかし、ナトリウムの摂取が過剰傾向であることを考慮すると、

この“目安量”では不足であるとして“目標量”が定められ、

男性3000㎎以上、女性2600㎎以上とされています。

この目標量を達成するには、1日で次の量以上食べることが必要です。

高血圧で肥満傾向にある人にもおすすめの食材で実例をあげてみました。

【カリウム2600㎎以上の食材例(カリウム量:㎎)】

アボカド1/2個(360)、キャベツ葉4枚(400)、レタス1/3個(200)、
エリンギ1本(230)、シメジ1パック(380)、
焼アジ1尾(490)、納豆1パック(330)、
キウイ1個(290)

結構大変な量だと思いませんか?

しかも、カリウムは調理の段階で損失する分もあるので、丸々摂取できるわけでもありません。

この点に関しては次項で触れますね。

もし、カリウムの目標量を達成するのが厳しいと感じるのであれば、

ナトリウムの摂取量を減らすという方法もあります。

高血圧の改善には体内のナトリウムとカリウムのバランスが保たれていることが重要なわけですから、

減塩を心掛けることでカリウムの目標量を下げられるということですね。

 
ただし、高血圧を含めた生活習慣病の予防にはもっとカリウムを摂取するべきという声もあり、

事実、アメリカやイギリスでは目安量が男女とも4700㎎/日となっています。

積極的にカリウムを追加したいという場合は、他の栄養バランスと考慮して、

「バナナ1本(360㎎)」「アーモンド10粒(80㎎)」「ピスタチオ10粒(50mg)」などを

適宜プラスしても良いと思います。

適した調理法

多くの食材に含まれているカリウムは、原始的な食生活の時代には簡単に補給できる栄養素でした。

しかし、現代にはそれを格段に難しくしている大きな要素があります。

それが「調理」です。

実は、カリウムはとても水に溶けやすいミネラルなんです。

ですから、カリウム豊富な食材を使っても、

「洗う」「煮る」「茹でる」などの工程によって食材中に残る量は変化してしまいます。

中でも「煮る」「茹でる」という調理はカリウムの流出量が多いので要注意です。

しかし、野菜などの硬い食材を加熱して柔らかくすることは、

美味しく食べる上でも、栄養吸収の上でも大切であり、

「洗う」という工程も衛生面で大きな意味を持っています。

 
では、具体的にどのような点に気を付けて調理すればカリウムの損失を防ぐことができるのでしょうか?

ポイントごとにまとめて見ていきましょう。

切ってから調理しない

前述の通り、カリウムは細胞の内側に多く分布しています。

でも、材料を切るということは、細胞を傷つけることです。

このため、細かく切れば切るほど、調理の過程で流れ出すカリウムの量は増加します。

ですから、丸ごと洗ってから切る(ちぎる)茹でてから切るというように、

できるだけ調理の工程の後ろの方に「切る」工程を持ってくるようにしましょう。

茹でずに「蒸す」「焼く」「揚げる」「生で食べる」

「茹でる」は、カリウムの損失が最も大きい調理法です。

女子栄養大学によると、食材により異なりますが、

例えばブロッコリーは45%、ホウレン草は50%、キャベツは59%のカリウムを失うことになるそうです。

損失量は葉物野菜の方が多く、ジャガイモ、カボチャなどの根菜類は少ない傾向にありますが、

それでも20%前後失われます。

できるだけ「茹でる」のではなく、「焼く」「蒸す」「揚げる」といった調理法を用いて、

食材が水分にさらされない方法を取りましょう。

特におすすめしたいのが、「電子レンジでチン!」です。

手軽な上にカリウムの損失が非常に少ないので、野菜類に火を通したいときにはピッタリです。

また、「焼く」のも損失が少なく、肉・魚などは余分な脂も落とせておすすめです。

油で「揚げる」のも水にさらさないので良いのですが、カロリーには気を付けましょう

また、ホウレン草は「サラダホウレン草」などの生で食べられるものを選ぶ、

レタスやキャベツも生で利用する、など生食するとカリウムの損失が少なくて済みます

なお、カリウムはビタミン類のような化合物ではなく“元素”ですから、

加熱によって壊れることはありません。安心してくださいね。

茹で汁を利用

茹でるとカリウムは食材中から流れ出てしまいますが、

分解されたり、別の物質に変化してしまったりするわけではありません。

茹で汁の中にカリウムとして存在しているんですね。

ですから、茹でた後の茹で汁も摂取できれば、食材中のカリウムを残らず摂ることができるわけです。

これに適した調理法が、具沢山のスープや味噌汁などです。

ただし、塩分を多くし過ぎると本末転倒ですから、くれぐれも薄味を心掛けてくださいね。

過剰摂取の危険性

さて、通常の食生活でカリウムを多く摂れるように気を付けたとしても、

腎臓に問題がなければ過剰摂取に陥ることはありません

私たちの体はカリウムを排出しやすいメカニズムになっていたんでしたね。

実は、これはカリウムの危険性を体が認識しているために進化した結果でもあるんです。

…というのも、カリウムは筋肉の収縮や神経の伝達にも関与しています。

そのため、カリウム不足だけでなく過剰な状態でもこれらの作用に影響を及ぼしてしまいます。

特に、心筋の収縮運動を支配しており、細胞外液中のカリウム濃度が何らかの原因で高くなると、

高カリウム血症で心臓が停止することもあるくらいです。

カリウム不足による低カリウム血症の際にはカリウムを投与しますが、

医療機関でも心電図などを確認しながら慎重に行っています。

ですから、むくみ防止などの目的でカリウムが配合されたサプリメントなどもありますが、

利用するときは決められた量以上を飲まないようにしましょう。

 
また、高血圧症の人の中には腎臓に疾患を抱えている人もいると思います。

腎臓の機能が低下していると、余分なカリウムを排出することができないため、

高カリウム血症などを起こす危険があります。

医師からカリウムの摂取を禁止されているケースも多いので、必ず指示に従ってくださいね。

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