高血圧・動脈硬化

高血圧の改善には肥満の解消が効果的である理由

肥満と高血圧

太っている人は血圧が高い”と言われると納得してしまいますね。

でも、「なぜ?」と聞かれると、理由を説明できる人は少ないのではないでしょうか?

これをきちんと理解しておくと、肥満の解消によって高血圧が改善する理由も、

その効果的な方法もわかってきます。

今回は、この点を踏まえ、高血圧の改善に効果的な肥満解消法を紹介していきます。

「高血圧」と「肥満」の基準

高血圧生活習慣病の1つで、男女ともに通院率の高い疾患です。

つまり、改善に時間がかかる慢性疾患ということですね。

日本高血圧学会によると、高血圧の診断基準は細かいものを省略すると、

《高血圧の基準》
収縮期血圧 140mmHg以上
または
拡張期血圧が90mmHg以上

が継続する状態とされています。

ちなみに、正常血圧は、収縮期血圧130mmHg未満かつ拡張期血圧85mmHg未満ですから、

これを上回れば高血圧予備軍と認識しましょう。

 
一方の肥満も、一部の病的要因によるものを除けば、生活習慣によるものです。

肥満は“病気”ではなく“体脂肪などが蓄積して標準よりも体重が多い状態”を指す言葉です。

日本肥満学会での診断基準にはBMI(ボディマス指数)が用いられていますが、

BMIは標準体型の人に向いた指数で、骨太だったり筋肉質だったりすると

正しく判定できないことがあります。

このため、BMIと体脂肪率の両方を用いた診断基準を用いることが多いようです。

《肥満の診断基準》
BMI 25以上
体脂肪率 男性19%・女性25%を超える場合

BMIは次の計算式により算出することができますから、自分の数値を知っておくと良いでしょう。

単位に注意して計算してくださいね。

BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

 

肥満で高血圧になるメカニズム

冒頭で触れた“肥満だと血圧が高そうなイメージ”は漠然としたものでなく、データの裏付けもあります。

一般社団法人「日本生活習慣病予防協会」の統計・調査によると、

肥満の人は正常な体重の人に比べて、約2~3倍多く高血圧症にかかる

のだそうです。

では、肥満だとなぜ高血圧になりやすいのでしょうか?

その理由として次の3つが考えられています。

  • 血液量が多い
  • 動脈硬化をおこしやすい
  • 血圧を上げる神経伝達物質やホルモンが分泌される

それぞれ見ていきましょう。

血液量が多い

これには2つの要因が関係しています。

1つは体積の増加によるもの、もう1つはナトリウムの濃度によるものです。

 
まず、体重が増えることによって、増えた体積の分、血管の長さも伸びますね。

そして体の隅々にまで酸素と栄養を届け、老廃物を回収する血液も、その分増えることになります。

しかし、体重が増えても心臓の大きさはほとんど変わりません

このため、伸びた血管の隅々にまで増えた血液を送り届けようとして、

心臓は頑張って高い圧力で血液を送り出そうとします

つまり、高血圧になるのです。

 
一方、肥満の人は“食べ過ぎ”の傾向にありますね。

食べ過ぎというと摂取カロリーばかりに目が行きますが、カロリーの摂取と同時に、

食品に含まれるナトリウムも体に摂り込んでいることを忘れてはいけません。

食品中のナトリウムは、主に味付けに使われる“食塩”に由来しています。

つまり、たくさん食べればその分ナトリウムも摂り過ぎることになるのです。

そして、肥満の人は油っこくて味付けがしっかりしたメニューを好む傾向にあります。

2015年に厚生労働省が発表した食塩相当量の目標値は、1日あたり男性8.0g、女性7.0gですが、

ハンバーグや麻婆豆腐など家庭でおなじみのメニューでも

1食で約6gになってしまうことも少なくないのです。

これを人より多めに食べたら、あっという間に目安量を上回ってしまいますね。

では、なぜ摂り過ぎると良くないのかというと、ナトリウムが体液量の調整に関わる物質だからです。

例えば、塩分を摂ると、消化・吸収によって血液中のナトリウム濃度が上昇します。

すると、上昇した分を薄めようとして、血管内に水分を取り込んでいきます。

そのため、血液の総量が増えてしまうのです。

血液量が増えると、その分心臓は血圧をあげて対応することになるというわけです。

動脈硬化をおこしやすい

肥満の人は脂質異常症(高脂血症)や糖尿病になりやすい傾向があります。

 
脂質異常症では血液中のLDL(悪玉)コレステロール量が増えるため血管が傷つきやすくなり、

その部分にLDLコレステロールが入り込んで酸化してしまいます。

これを取り除くためにマクロファージという白血球の一種が集まってきますが、

これが血管壁に沈着してコブのように硬くなり、血管を狭めてしまいます

これが「動脈硬化」と呼ばれる血管の状態です。

弾力を失い、狭くなった血管は心臓から送り出されてきた血液をスムーズに通過させることができません

このため、肥満によって血圧が高くなるという現象が起きるのです。

 
また、糖尿病とは血液中のブドウ糖が慢性的に多い状態ですが、

この過剰なブドウ糖が血管などを構成するタンパク質を糖化という現象によって変性させてしまい、

動脈硬化の原因になることがわかっています。

その結果、糖尿病でも血圧が上がってしまうのです。

血圧を上げる物質が分泌される

肥満になると、血糖値を下げるホルモンインスリン」が過剰に分泌されるようになります。

このインスリンには腎臓でナトリウムの再吸収を促進する働きがあるため、

余分なナトリウムを尿として排出しにくい状態になります。

すると、前述のように血液量が増加して、高血圧になるのです。

同時に、インスリンには交感神経を刺激する作用があり、

神経伝達物質を構成する「カテコールアミン」を放出させます。

これには抹消血管を収縮させる作用があるため、

血液が通過しにくくなることで血圧の上昇につながってしまうわけです。

さらに、肥満の人は脂肪細胞が肥大していますが、

ここから分泌される「アンジオテンシノーゲン」という物質には血管を収縮させる作用があるため、

血圧が高くなってしまうのです。

 
このように、肥満という状態が体のあちこちに作用して、

複合的な要因により血圧を上げてしまっていることがわかりますね。

特に、インスリンやカテコールアミン、アンジオテンシノーゲンといった物質は、

肥満が直接的な原因となって分泌される物質なので、

肥満が解消されればこれらの分泌量も適正値に戻るわけです。

肥満の解消が高血圧の改善に効果的である理由は、このような点にあったわけですね。

合併症の危険性

高血圧と肥満が重なると、体は想像以上に危険な状態に置かれることになります。

この状態とは、“重篤な疾患が発症しやすい条件が整いやすい”ということです。

これを示す最も有名な言葉が「メタボリックシンドローム(通称“メタボ”)」です。

 
メタボとは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖高血圧脂質異常症のうち

2つ以上の症状が一度に出ている状態をいいます。

2つ以上というと条件が緩いように感じるかもしれませんが、

実際には高血糖の人は糖尿病を患っているケースが多く、前述のように高血圧も併発することになるので、

2つの症状に該当してしまいます。

また、肥満だと高血圧になりやすいことも既に触れましたが、

同時に中性脂肪が蓄積された状態にもなっています。

そのため、脂質異常症のうち「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」を

発症しているケースが多く見られます。

つまり、肥満であるという時点で、

メタボの条件を満たす確率は正常な体格の人に比べて非常に高いということです。

もちろん、肥満の程度にもいろいろありますから、メタボの目安として

腹囲 男性85cm、女性90cm以上

というのは有名ですね。

厳密な診断基準には血圧や血液検査も用いられますので、腹囲は日頃の体調管理の参考すると良いでしょう。

 
では、メタボであると発症しやすい重篤な疾患とは、どのようなものでしょうか。

メタボの条件にある高血糖・高血圧・脂質異常症はいずれも動脈硬化の原因となります。

その結果、放置すると循環器系の病気にかかりやすくなります。

そして、循環器は血液やリンパ液などの体液を介して、体内の各臓器と密接な関りをもっています。

メタボであると、臓器にも悪影響を及ぼしてしまうということなんですね。

日本生活習慣病予防協会によると、

肥満、高血圧、高血糖、高トリグリセライド血症のうち3~4つが該当すると、

どれも該当しない場合に比べて心筋梗塞や狭心症の発症率が36倍にもなるとのことです。

この条件を満たすことは肥満の人にとって簡単なことですから、

それだけのリスクを背負っているということを自覚することが大切です。

また、大量の血液を必要とする脳にとっても循環器は重要です。

動脈硬化などによって脳への血流が不足すれば、

脳血管障害(脳梗塞・脳出血)の危険性も高まるということを知っておきましょう。

 
なお、女性のメタボ判定に用いる「腹囲90㎝以上」については異論もあります。

日本国内の調査で、心血管疾患の発症は腹囲80-90cmの女性に集中(57%)しているというデータがあり、

そのため、基準値を90cmに設定すると多くの高リスクの女性を見逃すことになってしまうというものです。

安心のためには“腹囲80㎝”と心得た方が良さそうですね。

 

ダイエットのためにできること

肥満が高血圧の原因となり、

さらにメタボなどを合併することで命に関わる疾患に発展することは明らかです。

逆に言えば、これらのリスクを回避するには肥満を解消すれば良いわけですね。

日本生活習慣病予防協会によると、

1kgの減量でLDL(悪玉)コレステロールが1mg/㎗低下すると言われています。

動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが減少すれば、

血液循環がよくなり、血管にかかる圧力を下げることにつながります。

ダイエットは肥満を解消し、高血圧を改善することになるわけです。

 
では、どうすれば肥満を解消できるでしょうか?

肥満になる原因は、病的な理由を除けば、

  1. 消費量に対して摂取量が多い(=食べ過ぎ)
  2. 摂取量に対して消費量が少ない(=運動不足)

の2つに絞られます。

それでは具体的な方法を紹介していきましょう。

食べ過ぎの改善法

まず初めにお伝えしたいのは、

食べ過ぎの改善とは「お腹いっぱい食べてはいけない」ということではありません

腹八分目を守ったとしても、1日に何度も食事をしていては痩せられないのです。

肥満の原因は体内に中性脂肪が蓄えられること、血糖値をコントロールできないことですから、

お腹いっぱい食べたとしても、

  • 中性脂肪に変わりやすいものを避ける
  • 規則正しく食事する

という点に気をつければ、それほど食事の量を減らさなくても実行可能なことなのです。

 
では、“中性脂肪に変わりやすい食品”とはなんでしょうか?

それは「糖質」です。

糖質とは白米・パン・うどんなどの主食や、

ジャガイモ、砂糖、ジュース類、酒類、菓子類などに多く含まれています。

私たちの体は栄養源として主にブドウ糖を利用していますが、

これが過剰にあると中性脂肪として蓄えることになるので肥満になりやすくなります。

糖質は非常に簡単なプロセスでブドウ糖に分解できてしまうため、

血糖値が上がりやすく中性脂肪に変わりやすい栄養素なのです。

近年では、食品から脂質(脂肪分や油脂)を摂取するよりも、

糖質の方が肥満になりやすいと指摘され、「低糖質」が推奨されていますね。

前述の通り、ブドウ糖は重要な栄養源であり、私たち日本人は欧米人よりも糖質を必要とする人種なので、

極端な糖質制限は体に負担が大きく危険ですが、摂り過ぎれば肥満を招くことも確実です。

特にお酒はついつい飲み過ぎてしまうこともありますが、糖類を多く含むだけでなく、

つまみを食べ過ぎてカロリーオーバーになりがちです。

節酒も心掛けるようにしてください

食事の際には糖質を控え、

タンパク質や食物繊維を多めに摂るようにして満腹感を得るように心掛けましょう。

脂質は糖質よりも中性脂肪に変わりにくいですが、ならないわけではなく、

カロリーも高いので摂り過ぎないように気をつけましょう。

 
また、“規則正しく食事する”ことで、なぜ痩せられるのでしょうか?

食事をすると血糖値が上がりますが、これを下げるように働くのはインスリンです。

しかし、頻繁に食べるとインスリンの分泌が追い付かなくなったり、分泌器官である膵臓が疲れたりして、

インスリンの量が不足するようになります。

血糖値が下がらなければ、体は過剰なブドウ糖を中性脂肪として蓄えようとしますから、

肥満の原因になるわけです。

逆に食事の時間が空きすぎると、体は飢餓状態と勘違いして、

食事をしたときに次回に備えて普段以上に栄養を蓄えておこうとし、中性脂肪に変換します。

これも肥満に繋がりますね。

ですから、時間を空けすぎず、近すぎずに食事を摂ることは、

血糖値を正しくコントロールすることにつながるわけです。

できるだけ1日の食事を3回に分けて均等に摂取することが望ましいとされています。

ただ、昼食から夕食までは小腹が空きやすいのも事実。

そんなときは午後2時〜4時頃に200kcal以下のものを摂るようにしましょう。

この時間帯は、身体に脂肪をつきやすくする「BMAL1(ビーマルワン)」というタンパク質の分泌量が

最も少ないときなんです。

比較的脂肪になりにくいタイミングを選んで間食するということですね。

さらに減塩も行うと、不必要に血液量が増えることもなくなり、血圧を下げることができますよ。

運動不足の改善法

肥満の人は多くの場合、食べ過ぎの傾向にあるので消費が追い付いていない状態にあります。

消費量を増やすには運動が最適です。

有酸素運動なら脂肪の燃焼にも効果がありますよ。

 
…とは言っても、太っていると「体が重いから動くのが億劫」という人も少なくないですよね。

まずは身近なところから体を動かす習慣をつけましょう。

買い物などの移動に、ついつい車を使っていませんか?

歩きだと帰りの荷物が大変…というのであれば、自転車をこぐのも立派な有酸素運動ですから大丈夫です。

買い物前に遠回りして、サイクリングを楽しむようにしましょう。

もちろん、ウォーキング、水泳、エアロビクスなどでもOKです。

目安は1週間で180分と言われていますから、1日30分くらい時間がとれると理想的ですね。

ただし、肥満の人は関節に負担がかかりやすいため、

ジョギングなど瞬間的に体重がかかるような運動は適していません

浮力によって負荷が少なくなる水中ウォーキングや水泳などは最適です。

取り組みやすいものから是非実践してみてください。

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