高血圧・動脈硬化

要注意!高血圧の薬とグレープフルーツの相性

高血圧の薬を飲んでいる人の中には、医師や薬剤師から

グレープフルーツを食べないでください」という注意を受けた人がいると思います。

でも、「なぜダメなのか」「食べたらどうなるのか」といった疑問が残りますね。

ここでは、血圧の薬とグレープフルーツの相性について、

摂ってはいけない理由やその弊害どんな摂り方がいけないのかなど、わかりやすく解説しています。

 

Ca(カルシウム)拮抗剤とは

高血圧の人は、血圧を下げるための薬「降圧剤」を処方されている場合が多いと思います。

この薬は上り過ぎた血圧をコントロールするためのもので、

腎臓や筋肉、ホルモン・神経などに働きかけることによって血圧を下げる作用を持っています。

しかし、高血圧を治療する薬ではなく、一時的に血圧を下げることしかできないため、

高血圧の人は毎日1~数回、長期間にわたって飲むように指導されます。

そして、これらの中に「Ca拮抗剤」という筋肉に働きかけるタイプの降圧剤があります。

この薬がグレープフルーツと深く関わるので、作用メカニズムについて簡単に説明しておきましょう。

 
私たちの血管は外側を「血管平滑筋」と呼ばれる筋肉で覆われていて、

刺激を受けると収縮したり拡張したりして血管の太さを調整しています。

血管平滑筋が緩んで拡張しているときは血管が太くなって、血液は流れやすくなり、

反対に収縮しているときは血管が細くなって、血液が流れにくくなります。

血液が血管の中を流れにくいと血圧は上昇しますから、血管平滑筋が収縮しやすいと高血圧になるわけです。

実際のところ、高血圧患者の中には収縮傾向の強い人がいることが確認されています。

では、どのようにして血管平滑筋は収縮するのでしょうか?

実は血管に限らず、筋肉が収縮するには筋肉の中にカルシウムイオンが入り込むことが必要です。

通常は緊張や運動などによって神経が刺激されると、

これが筋肉に伝わってカルシウムを取り込むようになるのですが、

高血圧患者の中には血管平滑筋にカルシウムを取り込みやすい人がおり、

血圧が上がりやすくなっているとみられています。

そこで、これを防止することで血圧の上昇を防ぐ「Ca拮抗剤」が開発されたというわけです。

 

グレープフルーツがいけない理由

Ca拮抗剤は副作用が少なく、他のタイプの降圧剤とも併用できるため、最もよく処方される降圧剤です。

しかし、問題になるのが「グレープフルーツ」との相性です。

Ca拮抗剤を処方されると、多くの場合、

医師や薬剤師からグレープフルーツを摂らないように指導されます。

なぜ摂ってはいけないのか、その理由を詳しく見ていきましょう。

グレープフルーツの成分と作用

グレープフルーツには「フラノクマリン類」という化合物が含まれています。

グレープフルーツには「ベルガモチン」「ジヒドロキシベルガモチン」などが多いですが、

他の植物には毒性の強いものも知られており、

これは植物が種子を昆虫や動物から守るために作り出していると言われています。

このフラノクマリン類にCa拮抗剤の作用を強める働きがあるため、

薬剤の効果をコントロールできなくなるとして、グレープフルーツの摂取を制限されるのです。

 
一般的に、私たちが薬を飲むと、小腸で吸収されて肝臓にいき、代謝されます。

そして、薬も他の食べ物と同じように分解の対象となり、

体内の薬の量は次第に減少して尿や便として排出されるのです。

このため、薬は一回の服用で一生効果が続くことはありません。

代謝(分解)にかかる時間は異なりますが、安定的に効果を持続させたい降圧剤のような薬の場合は、

これらの時間を考慮しつつ次の薬を飲むことが必要になるわけです。

一日の服用回数が薬によって異なるのは、この辺りの事情も関係しているわけですね。

そして、ほとんどの薬の代謝には「チトクロム(シトクロム)P450」という酸化還元酵素が関わっており、

人間では50種類ほどが知られていますが、

この中でも、小腸の上皮細胞に存在する「CYP3A4」という酵素がCa拮抗剤の代謝に深く関与しています。

しかし、グレープフルーツのフラノクマリン類にはCYP3A4を阻害することで

Ca拮抗剤の代謝を妨げ、吸収量を増やしてしまう作用があるのです。

そのため、薬剤の血中濃度が高まって効果が強くなり、

極端な血圧の低下、心拍数の増加、ふらつき・めまい・頭痛などの副作用

現れやすくなることがあるのです。

安定的に血圧をコントロールし、副作用が起こりにくいようにするためには、

Ca拮抗剤が正常に代謝される必要があるため、

これを妨げるグレープフルーツを制限されてしまうというわけです。

フラノクマリン類の阻害作用の強さ

フラノクマリン類はグレープフルーツのどこに含まれているのでしょう?

分析の結果、いちばん多いのは外皮ですが、皮と果肉の間の白くてフワフワした部分(アルベト)や

果肉・種子にも含まれていることがわかっており、

生のまま食べてもジュースとして飲んでもCa拮抗剤への影響があります

そして、フラノクマリン類は酵素「CYP3A4」を不可逆的に変性させてしまうため、

新しい酵素が作られるまでの間、Ca拮抗剤の代謝ができなくなります。

個人差はありますが、その作用は数十時間~数日間続き、

この間、Ca拮抗剤の血中濃度が高い状態が続くことになります。

ある報告では、CYP3A4が機能を75%回復するまでに3日、

90%回復するまでに4日かかるとされているんですよ。

ですから、「グレープフルーツジュースでCa拮抗剤を飲んではいけない」とか

「Ca拮抗剤を飲んでから時間が経てばグレープフルーツを食べてもいい」というのは勘違いで、

「Ca拮抗剤の服用期間中はグレープフルーツを摂らない」というのが正しい認識です。

ちなみに、グレープフルーツには果肉が白いホワイトタイプと、赤いルビータイプがありますが、

ホワイトの方がルビーよりもフラノクマリン類を2倍程度多く含んでいると言われています。

果実1/4個、あるいはコップ1杯のジュースでも影響することが確認されているので、

服用中は避けるべきです。

グレープフルーツ好きの人には辛い制限ですが、薬の効果を正しく安全に得るために守るようにしましょう。

どうしても食べたい場合は、別のタイプの降圧剤に変えられるか、医師に相談してみてくださいね。

 
なお、Ca拮抗剤にもたくさんの種類があり、フラノクマリン類の影響も異なることがわかっています。

医師や薬剤師に確認してみるといいでしょう。

【影響を受けやすいCa拮抗剤の成分例】

  フェロジピン類、ニソルジピン類など

【薬の例】

  • バイミカード
  • スプレンジール
  • アダラート
  • カルブロック
  • コニールなど
  •   

【影響を受けないとされるCa拮抗剤の成分例】

  アムロジピンベシル酸塩、ジルチアゼム塩酸塩など

【薬の例】

  • ノルバスク
  • アムロジン
  • ヘルベッサーなど

臨床試験でグレープフルーツの影響をほとんど受けなかったことが報告される薬もありますが、

薬剤の効果は個人差が大きいため、すべての人に問題がないとは言い切れない面もあり

影響が疑われる例もゼロではありません。

したがって、医師にグレープフルーツの摂取を制限された場合は、

それに従っておく方が安全といえるでしょう。

また、これらの影響は小腸で薬剤が吸収される際に起こることなので、

注射によって直接的に投与された場合はグレープフルーツによる害がないことが確認されています。

 

グレープフルーツ以外には含まれない?

「Ca拮抗剤とグレープフルーツの相性が悪い」というのは耳にすると思いますが、

では、他は問題ないのでしょうか?

実は、グレープフルーツ以外にもCa拮抗剤と相性の悪い…つまり相互作用を示すものがあります

次の表をご覧ください。

 

《Ca拮抗剤と果物の相互作用》
グループ相互作用あり 相互作用なし 不明または報告なし
ザボンの仲間ブンタン・グレープフルーツ
・絹皮・スウィーティ・ハッサク
・晩白柚(ばんぺいゆ)
ダイダイの仲間 夏ミカン・ダイダイ
・サワーオレンジ
バレンシアオレンジ日向夏・伊予柑
・トロビタオレンジ
柚子の仲間カボス ユズ・スダチ
みかんの仲間温州みかん ポンカン・シークァーサー
・地中海マンダリン
雑種、
その他
レモンピール(果皮)レモン果肉ライム・ベルガモット
・清見オレンジ
・デコポン

※愛媛大学医学部附属病院薬剤部 薬品情報室の資料を元に作表

「相互作用あり」と確認されているものは、いわゆる柑橘類で「ザボン」や「ダイダイ」の仲間

…少し苦みを感じるタイプのものが多いようです。

同じ柑橘類でも「バレンシアオレンジ」や「みかん」は問題ないとのことですから、

買う時は気を付けるようにしましょう。

柑橘類はポピュラーなフルーツなので品種改良が進んでおり、非常に多くの種類が店頭に並んでいます。

しかし、品種改良にフラノクマリン類を多く含む種類を用いていると、

改良後の品種にも多く受け継がれる傾向が見られます。

例えば、グレープフルーツとブンタンの交配種である「スウィーティ」、

ザボンの一品種である「晩白柚」などは原種と同じようにCa拮抗剤との相性がよくありません

グレープフルーツだけが該当するわけではないことを認識しておきましょう

 
また、生で食べる場合に限らず、加工品にも注意が必要です。

柑橘類の加工品には、

  • ジュース・スムージー類
  • ジャム類(マーマレード、ピューレ、ソースなど)
  • ドライフルーツ、砂糖漬け・チョコレートコーティングしたお菓子

などがあります。

東京理科大学薬学部の砂金准教授らの研究によると、

製造工程での加熱や茹でこぼしなどによって分解・損失する分もありますが、

製品中にフラノクマリン類が残存するものも確認されているそうです。

これらの残存率は、製法や品種、そのほかの物質などの条件で変化する可能性があるとのことですが、

私たちが選ぶ食品の一つ一つにフラノクマリン類がどのくらい含まれるかを把握することは不可能です。

特に、マーマレードや砂糖漬けのようにピール(果皮)ごと使用する加工品は、

一回当たりの摂取量が少ないものの、原料を確認して該当する柑橘類が使用されていたら

避けた方が無難と言えるでしょう。

中には、レモンのように果実の部位によってフラノクマリン類の分布が異なるフルーツもあります。

念のため、気を付けるようにしましょう。

その他の注意

ここでは「グレープフルーツとCa拮抗剤」についてのちょっとした疑問やトラブルについて紹介します。

うっかり勘違いしていることもあるので、ご一読くださいね。

薬の説明を正しく読み取ろう

最近の処方薬は、調剤薬局の袋に薬の成分と一緒に注意事項が書かれていたり、

添付文書を付けられたりすることが多いですね。

患者にとっては医師や薬剤師からの説明だけでなく、情報が手元に残るのでとても便利です。

しかし、記載されている内容が理解しにくいものだったり、

勘違いさせるようなものだったりすることも少なくありません。

今回とりあげたCa拮抗剤に関しても、「グレープフルーツを摂らないでください」という文言では

加工品の是非に関しては読み取れませんね。

中には、「グレープフルーツで薬効が増強する」旨が書かれていることもあります。

これはフラノクマリン類の作用を的確に表現したものですが、

人によっては「グレープフルーツを摂取すれば薬の効果がアップする」と捉え、

積極的に摂ってしまうケースも実際にあるのです。

どんな薬もそうですが、効きすぎれば害を成しますし、効果を発揮しなければ意味がありません。

そのため、薬には必ず用法・用量がありますし、個人差を考慮した上で医師が処方箋を出しています。

注意書きの意味を拡大解釈せず、

“それならどうすれば良いのか”が不明瞭な場合は薬剤師などに確認するようにしてください。

「グレープフルーツ味」もダメ?

グレープフルーツは甘みと酸味に独特のビター感があり、

さっぱりとした飲料や食品に好まれるフレーバーです。

例えば、スポーツドリンクや缶チューハイなどは、グレープフルーツ風味のものが多い傾向にあります。

では、「“グレープフルーツ”と書かれているものは全て摂ってはいけないのか」というと、

決してそうではありません。

もちろん、原材料表示にグレープフルーツの記載がある加工品は間違いなく使われていますが、

グレープフルーツ味」や「グレープフルーツ風味」というパッケージ表記のものには、

単に香料などで風味付けしただけで、果汁が使用されていないものもあります

こういった商品は摂取してもフラノクマリン類が含まれていませんので、問題なしです。

中には、「無果汁」となっているものもありますが、

これは果実・果汁の含有量が全くないか5%未満であることを示しています。

原材料表示をみてグレープフルーツの記載があれば避けた方がよいですが、

そうでなければ他の果物の果汁と併せて5%未満ということなので、

少量摂るくらいであれば問題ないと見て良いでしょう。

グレープフルーツを摂ってしまったら…

間違えてグレープフルーツを摂ってしまうこともありますよね?

副作用が現れている場合は、次の服用時間になる前に医療機関を受診するか薬局などに相談し、

判断を仰ぐことをおすすめします。

しかし、フラノクマリン類の作用の強さは個人や食品によって大きく異なります

副作用など体に異変が見られなかったとしても、

それ以上摂らないようにして、医師・薬剤師などに相談するのが良いでしょう。

特に一日数回の服用が必要なCa拮抗剤の場合は、

次の時間は飲まないか量を少なくする方が良いかもしれませんし、

体質的に薬の効果が高まっていなければ通常通り服用した方が良いこともあります。

この辺りの判断は素人では難しいので、専門家の判断を仰ぐようにしましょう。

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