高血圧・動脈硬化

高血圧の薬はすぐ効く?降圧剤の作用や即効性について

血圧が高いと医師から降圧剤の服用を勧められることがあります。

降圧剤を飲めば血圧は下がりますが、

なぜ下がるのか」「すぐ効くのか」「どのくらい効果が続くのか」「副作用はないのか」など

疑問に思うこともたくさんありますね。

ここでは、薬の作用メカニズム即効性注意点についてなど、

「降圧剤」についてわかりやすく解説しています。

 

降圧剤とは

生活習慣病の1つである「高血圧」の発症には、過食や運動不足など生活習慣の乱れが背景にあるので、

まずはこれを改善していくことが重要です。

しかし、すぐに血圧のコントロールが必要な場合や、これらの改善でも効果が得られにくい場合は、

医師の判断により「降圧剤(血圧降下剤)」と呼ばれる薬を処方されます。

 
「降圧剤」とはその名の通り“血圧を下げる薬”です。

血圧が高い状態が続くと血管にダメージを与え、血管が硬く細くなってしまう「動脈硬化」や、

これによって生じた血栓が高い血圧で押し流されて血管を詰まらせてしまう「脳梗塞」「心筋梗塞」を

発症する可能性が高くなってしまいます。

このため、血圧をできるだけ低く維持することが、健康を保つうえで重要なことなのです。

そこで用いられるのが「降圧剤」というわけです。

降圧剤にも次のように作用の仕方が異なる薬があって、

その人の体質や抱えている病気などによって適したものを医師が選択し、処方されます。

【主な降圧剤の作用メカニズム】

  • 腎臓に作用するもの
  • 血管の筋肉に作用するもの
  • ホルモンの分泌を阻害するもの
  • 交感神経の刺激を阻害するもの

それでは、詳しく見ていきましょう。

腎臓に作用するもの

“血圧”というのは「血液が血管の壁を押す力」のことです。

ですから、容器である血管の長さや太さが大きく変化しないのに、中を満たす血液の量が増えてしまうと、

空気をパンパンに入れられた風船のように、中側の圧力は高まってしまいます。

つまり、血液の量が増えてしまうと、血圧が上がることになるのです。

この血液の量を調整しているのが食塩の主成分でもあるナトリウム」で、

血液中のナトリウム濃度を一定に保つことによって、血液の量をコントロールしています。

ところが、ナトリウムの排出がうまくいかなかったり、塩分を過剰に摂ってしまったりすると、

血液中のナトリウム濃度が高くなってしまいます。

すると、血管の外にある水分を血液の中に呼び込んで、ナトリウムを薄めようとする現象が起こります。

このとき、薄めるために必要な水分の分だけ血液が増えたことになり、血圧が上昇するというわけです。

 
逆に言えば、余分なナトリウムや水分を体外に捨ててしまえば、血圧の上昇を防げることになりますね。

これらの排出を行う器官は「腎臓」です。

腎臓の中には毛細血管が張り巡らされており、

血管から不要なナトリウムや水分を濾過して尿として体外に捨てているのです。

そこで、腎臓で尿をたくさん作らせ、

ナトリウムや水分を排出させることで血圧を低下させようという薬が「利尿剤」と呼ばれる降圧剤です。

利尿剤は血管そのものに働きかけるわけではありませんが、

血液の量を減少させる作用に優れる上に、他の降圧剤の効果を高めるため、よく使用されています。

【利尿剤】
腎臓に働きかけて尿の合成を促進し、
尿中にナトリウムや水分を排出させることで血液量を減少させ、血圧を下げる。

血管の筋肉に作用するもの

血管の壁の周囲には“血管平滑筋”という筋肉があり、

この筋肉が収縮すると、隣接する血管が圧迫されて血管も収縮します。

血管が細くなると血液が中を通りにくくなりますから、血圧の上昇につながるわけですね。

ただし、この筋肉が収縮するには、筋肉の中にカルシウムイオンが入り込む必要があります。

そこで、カルシウムの流入を抑えて、筋肉を収縮させないように働くのが、

Ca(カルシウム)拮抗剤」と呼ばれる降圧剤です。

これによって筋肉が弛緩して血管が拡張するため、血圧を下げることができるのです。

【Ca拮抗剤】
血管平滑筋にCaが流入して筋収縮が起こり血管が狭まってしまうのを防ぐ。

ホルモンの分泌を阻害するもの

血圧の上昇にはホルモンも関係しており、その1つに「アルドステロン」があります。

アルドステロンは腎臓でのナトリウムの再吸収を促進し、

血液などの体液を増加させることで血圧を上げる働きをしています。

さらに「バソプレッシン」というホルモンにも働きかけ、

水分の再吸収も促進させ、血液を増加させる作用があります。

このアルドステロンの分泌に関わるのが「アンジオテンシンⅡ」という生理活性物質です。

逆に言うと、アンジオテンシンⅡが作られないようにするか、アンジオテンシンⅡの働きを邪魔すれば、

血圧の上昇を抑えることができますね。

前者の作用を示すのが「ACE阻害剤」、後者が「ARB」と呼ばれる降圧剤です。

【ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤】
アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡを作るときに作用する酵素“ACE”の働きを
阻害することによって、アンジオテンシンⅡを作らせない。

【ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗剤)】
アンジオテンシンⅡが“受容体”に結合できないように邪魔することで、血管収縮や体液の増加を防ぐ。

交感神経の刺激を阻害するもの

体には、私たちの意思とは無関係に働く機能が備わっています。

例えば、呼吸や体温の調節、消化・吸収などは意識しなくても自動的に行われていますね。

これらの機能は「自律神経」によって支配されており、

自律神経には主に活動時に働く「交感神経」と、休息時に働く「副交感神経」があります。

血圧の上昇に関係するのは交感神経なので、この刺激を抑えられれば血圧の上昇を防げるわけです。

この作用を持つ降圧剤が「α遮断薬」「β遮断薬」です。

交感神経が興奮すると“ノルアドレナリン”という化学物質が分泌され、

これが血管平滑筋や心筋細胞にある“受容体”に結合すると血圧の上昇が起こりますが、

遮断薬はこの結合を阻止するように働きます。

受容体にはαやβなどの型があり、どちらを阻止するかで「α遮断薬」と「β遮断薬」に分かれています。

【α(アルファ)遮断薬】
主に血管に分布する“α1受容体”にノルアドレナリンが結合すると、末梢血管が収縮して血流が低下し、
これによって心臓が活発に拍動して血圧を上げてしまうが、
この結合を遮断することで末梢血管が刺激を受けないようにする。

【β(ベータ)遮断薬】
主に心筋細胞に分布する“β受容体”にノルアドレナリンが結合すると、
心拍が増加して血圧を上げてしまうが、
この結合を遮断することで心筋細胞が刺激を受けないようにする。

 

即効性と持続時間

このように、一口に「降圧剤」といっても作用のメカニズムは異なっており、

効果が現れるまでの時間にも違いがあります

一般的に薬を経口投与した場合、胃で消化された後、小腸から吸収されて肝臓へ運ばれ、

肝臓で代謝されてから血液中によってターゲットとなる器官へ運ばれます。

ですから、消化・吸収にかかる時間は必要と言うわけです。

そのあと、薬がどのくらいで効果を発揮するかについては種類によって差が出てきます。

例えば、「利尿剤」の作用は“尿を作ること”ですから、

尿がある程度できあがらないと血液量が減少しないため、少々時間がかかります。

一方、他の薬は直接的に筋肉や神経系に作用するので、比較的効果は速く現れます。

このような作用メカニズムによる違いのほか、

同じメカニズムでも薬の種類によって即効性に違いがあるものもあります

しかし、血圧というのは大きく変動すること自体が危険であるため、

即効性のある薬を使うとしても、通常は数週間かけて目標の血圧値に達するように、

有効量の半分程度から服用するようにします。

つまり、降圧剤に関しては即効性のある薬も比較的ない薬も、

急激に効果が出すぎないようにコントロールすることが重要なのです。

 
この点を考えると、即効性よりも問題になるのが持続時間です。

降圧剤を処方された人は何年もの間、毎日飲み続けなければならないため、

飲み忘れ”という事態も発生しやすくなります。

もし、1日3回のように頻繁に飲むとしたら、飲み忘れる確率は高まってしまいますね。

前述のように、血圧は変動させないように低く保つことが重要ですから、

薬を飲み忘れて血圧が元に戻ってしまうという事態は好ましくないわけです。

そこで、「Ca拮抗剤」「ACE阻害剤」「ARB」などの降圧剤は

1日1回の服用で24時間以上効果があるタイプが主流になってきています。

毎日同じ時間に飲んでいれば、薬の作用が完全に切れることなく血圧をコントロールできるわけです。

一方、種類にもよりますが、

利尿剤」「α遮断薬」「β遮断薬」は服用回数が2回以上のものも多く見られます。

これは、利尿剤ですと長時間の乗車時や夜間に尿意を催すのは不便なので、持続しない方が好まれますし、

遮断薬は呼吸器系や心疾患への副作用が懸念される点があるので、

様子を見ながら使用する方が望ましいという理由が背景にあります。

持続時間が短いことがメリットになるケースもあるわけですね。

例えば朝だけ血圧が上がりやすいといった傾向がある人は、

その時間帯だけに薬を作用させることも可能なわけです。

この辺りは、他の疾患や血圧の状態、患者のQOL(生活の質)の維持などを考慮して

医師が選んでくれます。

現在使用されている降圧剤は同じ作用メカニズムでも即効性や持続時間の異なる薬が開発されています。

降圧剤とは長く付き合わなければならないので、

悩みや気になることがあれば、遠慮なく医師に相談するようにしましょう。

くれぐれも自己判断で量を増減したり、服用を止めたりしないでくださいね。

 

降圧剤の選択方法とは

実際に降圧剤を服用するとなると、なぜその薬が選ばれたのか気になりますね。

医療の現場では、多くの医師が「高血圧治療ガイドライン」に基づいて、薬を選んでいきます。

それでは、薬の選択肢を見ていきましょう。

【STEP 1】

  • Ca拮抗剤
  • ARB
  • ACE阻害剤
  • 利尿剤

のいずれか

高血圧の治療が必要とされた最初の段階で処方される薬は「第一選択薬」と呼ばれ、

体への負担が少ない薬から選び、単独で使用されます。

“負担が少ない”とは、血管には作用しても心臓や他の臓器への影響が少ないことを意味します。

この点、最も優れているのが「Ca拮抗剤」で、末梢血管を拡張し速やかに血圧を下げる作用はありますが、

心臓へはあまり影響しないという特徴を持っています。

また、動脈硬化の進行を抑制する作用もあるため、高血圧の悪化を予防する効果もあるわけです。

また、降圧剤を飲んだことがない人なので、副作用の出にくいARB」が処方されることもあります。

ACE阻害剤」もARBと同じような作用をし、どちらも心臓や腎臓を保護する働きがありますが、

ACE阻害剤は副作用として“軽い咳”が報告されているため、

持病などによっては選択されないこともあります。

利尿剤」は腎臓に作用することで血圧を下げますから、

循環器への負担が少なく、妊婦でも使用できる降圧剤です。

初期の段階では、これらの降圧剤を単独で、少量から飲み始めることが多いでしょう。

しかし、薬の効果は人によって異なります。

どのタイプの薬でも、異変を感じたらすぐに主治医に相談するようにしてください。

【STEP 2】

  • カルシウム拮抗剤 + ARB/ACE阻害剤
  • カルシウム拮抗剤 + 利尿剤
  • ARB/ACE阻害剤 + 利尿剤

のいずれかの組み合わせ

STEP1で効果が得られない場合は、降圧剤を組み合わせる方法がとられます。

「ARB」と「ACE阻害剤」は薬のターゲットがほぼ同じなのでどちらかが選択されますが、

ARBは比較的新しい降圧剤のため、薬価が高いというデメリットがあります。

「利尿剤」には作用メカニズムの異なるタイプがあり、変えてもらうと降圧効果が現れることもあります。

【STEP 3】

カルシウム拮抗剤 + 利尿剤 + ARB/ACE阻害剤

降圧剤2種の組み合わせでも効果が得られなかった場合は、さらに1種類追加となります。

高血圧を長く患っていると糖尿病などの合併症を起こす人も出てきますが、

「ARB」にはインスリン感受性を改善する作用があるため、この薬が選択される可能性が高くなります

【STEP 4】

  • カルシウム拮抗剤 + 利尿剤 + ARB/ACE阻害剤 + β遮断薬/α遮断薬
  • アルドステロン拮抗薬など他の種類の降圧剤

血圧がなかなか下がらない場合、作用メカニズムの異なる降圧剤を4種類組み合わせて使用します。

「α遮断薬」と「β遮断薬」は作用メカニズムが似ているため、どちらかが選択されます。

「α遮断薬」はもともと第一選択薬に含まれていませんでしたが、

2014年のガイドライン改訂によって「β遮断薬」も外されることになりました。

よって、遮断薬は他の降圧剤で改善が見られなかった場合の選択薬となっています。

アルドステロン拮抗薬」は、

血管の炎症や心肥大を起こす“アルドステロン”に拮抗的に作用することで高血圧を防ぐほか、

利尿剤として腎臓で水分が再吸収されるのを抑制する作用があります。

 
以上は、他の病気を発症していない場合のガイドラインです。

他の病気がある場合は、それに対するメリットがある降圧剤が優先的に選ばれる(積極的適応)ので、

医師の指示に従いましょう。

例えば、心不全の患者の高血圧症には、

心不全治療薬でもある「ACE阻害剤」か「ARB」、

または「利尿剤(サイアザイド系)」、「β遮断薬」が優先的に選択されます。

 

降圧剤の気になる疑問

最後に、降圧剤の服用にあたって気になる点について触れておきましょう。

副作用飲み忘れたときどうすればいいのかなど、

よくある疑問について紹介していますので、ぜひお読みください。

副作用は?

降圧剤には作用メカニズムが異なるものもあるため、副作用にも違いはありますが、

共通するのは、次のような症状です。

  • 頭痛
  • めまい
  • むくみ
  • 腎機能の低下
  • 肝機能の低下

(男性の場合は勃起不全、精力減退などが報告されています。)

これらの副作用は、降圧剤を飲んだ人全員に見られるわけではありませんが、

仮に副作用が見られたとしても、よほどのことでない限り、服用を中止することはありません。

なぜなら、降圧剤の副作用の方が、高血圧のままでいるよりも安全だからです。

ですから、勝手な判断で薬を中止するのは危険なことです。

ただし、生活に支障が出るほどの副作用や気になることがあるなら、医師に相談してみてください。

用量を減らすか降圧剤の種類を変えることで、

血圧をコントロールしつつ副作用を軽減することも可能だからです。

その上で、決められた量を決められた時間に飲み続けるようにしましょう。

飲み忘れたらどうする?

ついつい飲み忘れるということは、誰にでもあります。

「気づいたときに飲む」「次の服用時間まで飲まない」など対応に悩むこともあると思いますので、

予め医師に聞いておくのが一番ですが、一般的な場合は次のような対応を目安にしてみてください。

 

《降圧剤を飲み忘れた時の対応》
1日の
服用回数
忘れた分を飲む方が良い場合
飲まない方が良い場合
1回
約6時間以内左記以上経過しているとき
2回
約3時間以内左記以上経過しているとき
3回約1時間以内
左記以上経過しているとき

また、飲み忘れたとしても、次の服用時に2回分飲むのは危険です。

降圧剤の効果は量に比例しますので、効き目が強く出過ぎて貧血などを起こす可能性もあります。

1回の量は医師の指示がない限り変えないようにしてください。

いつまで飲み続ける?

これが一番気になるところ…かもしれませんが、そもそも降圧剤は高血圧を治す薬ではありません

一時的に血圧を下げるだけです。

ですから、降圧剤に頼っていては高血圧を改善することはできず、

したがって降圧剤をやめることもできません。

「高血圧治療ガイドライン」によれば、高血圧の改善には生活習慣の改善が不可欠とあります。

具体的には塩分の過剰摂取と食べ過ぎを控え、適度な運動によって肥満を防止することが、

高血圧改善にとって最良の方法なのです。

しかし、すぐに健康に支障がないほどに血圧を下げられませんから、その効果が現れるまでの間、

血管や臓器へのダメージを軽減する目的で用いるのが本来の「降圧剤」の意義です。

ですから、降圧剤によって血圧をコントロールしつつ生活を改善しなければ、

降圧剤の量を減らしていくことは難しいと言えるでしょう。

生活を変えることは大変かもしれませんが、効果が大きいこともわかっています。

自分にできるところから、少しずつ始めていくようにしましょう。

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